12速ロードの変速性能はチェーンとスプロケットだけで決まらない
ロードバイクの変速性能が悪くなったとき、まず疑うべき場所はチェーンです。
チェーンが伸びていたり、摩耗していたりすれば、変速性能は当然低下します。
実際、チェーンを新品に交換すると、変速の感触はかなり良くなることが多いです。
ですが12速の場合は、過去の記事でもご紹介した通り、少し注意点があります。
・12速チェーンでは、チェーンチェッカーでは判断しづらい摩耗がある
・12速はカセットスプロケットの摩耗も変速性能に影響を与えやすい
つまり、チェーンだけを新品にしても、スプロケット等チェーン以外の部分の摩耗があれば、本来の変速性能には戻りきらないことがあります。これは12速の場合はより顕著なことです。
そして12速ロードの変速性能を考える場合、もう一つ見落としたくない部品があります。
それが今回の主役でもある、リアディレイラーのプーリーです。
プーリーは、リアディレイラーの動きをチェーンへ伝え、チェーンを正しい位置へ導く部品です。
コントロールレバーからの司令を受け取ったリアディレイラーが変速動作をしたとしても、その動きをチェーンに伝える部分であるプーリーの状態が悪ければ、変速の精度は落ちます。
変速性能はチェーンとスプロケットだけで決まるものではありません。
特にSHIMANO 12速のHYPERGLIDE+は、非常に変速性能が高いシステムです。
負荷がかかった状態でも変速が速く、変速ショックも少なく、世界最高峰の変速性能を誇ります。
ただし、性能が高いということは、それだけ各部品の状態にも影響を受けやすいということでもあります。
今回は少々マニアックな話ですが、その中でもプーリーに絞ったお話にしてみようと思います。
※厳密にはハンガーや各所の精度や剛性等も影響があります。
実際に使用した12速プーリーはどうなるのか
では、実際に使用を重ねた12速プーリーはどうなるのか。
今回は、実際に使用していたSHIMANO 12速用プーリーを確認していきます。
プーリーというと、単に回っているだけの小さな部品と思われることもあります。
しかし、実際に外して確認してみると、摩耗、割れ、ガタといった変化が出ていることがあります。
この状態を見れば、プーリーも明確な消耗品であることが分かります。

歯先の摩耗
まず分かりやすいのが、歯先の摩耗です。
プーリーはチェーンと常に接触しながら回転しています。
そのため、走行距離が増えれば当然少しずつ摩耗していきます。
特に興味深いのは、ガイドプーリーとテンションプーリーで摩耗の出方が違うことです。
SHIMANO 12速用のプーリーは、ガイド側とテンション側で同じ部品を使用します。
しかし、同じ部品であっても、実際に使用したものを見ると歯先の減り方は同じではありません。
これは、ガイドプーリーとテンションプーリーで役割が違うためだと考えられます。
ガイドプーリーは、変速性能に直接関わるプーリーです。
特に変速時には、チェーンを横方向へ導く役割を主に担っています。
そのため摩耗としては、歯先にかけての摩耗や、特に歯先先端の傷、全体的な痩せが目立ちやすい印象です。
一方でテンションプーリーは、その名の通りチェーンの張りを保つ役割を持っています。
ガイドプーリーと比べると、歯先先端の傷や摩耗はそこまで目立ちません。
ただし、テンションプーリーはフロントチェーンリングから流れてくるチェーンを受け止め、リアディレイラー下側でチェーンの張りを保つ部品です。
そのため、歯先だけではなく、軸まわりにも負担がかかりやすいと考えられます。
このように、同じプーリーであっても、チェーンの当たり方、力のかかり方、摩耗の進み方は同じではありません。
歯先が摩耗してくると、チェーンを保持する形状が少しずつ痩せていきます。
その結果、チェーンの動きがわずかに曖昧になり、音や変速時の僅かな反応に影響が出てきます。
プーリーは小さな部品ですが、変速性能に直接関わる重要なパーツです。
歯先が減っていても、とりあえず走れてしまうことは多いです。
しかし、本来の変速性能を求めるのであれば、摩耗したプーリーをそのまま使い続けるのはもったいないことだと思います。

プーリーの割れ
次に確認したいのが、プーリーの割れです。
今回確認したプーリーでも、樹脂部分に割れが発生していました。
私の使用環境では、12速プーリーに割れが発生したのは今回が初めてではありません。
これまでにも複数回、同じようにプーリーの割れを確認しています。
割れが入っていても、すぐに走行不能になるとは限りません。
しかし、割れている時点で正常な状態ではありません。
使用距離、使用環境、変速頻度、チェーンの状態、メンテナンス状況などによって発生しやすさは変わります。
ただ、実際にお客様のバイクでも、12速プーリーの割れを確認することは少なくありません。
そのため、12速ロードの点検では、プーリーの摩耗だけでなく、樹脂部分に割れが出ていないかもしっかり確認する必要があります。
プーリーはチェーンを受け、変速時にはチェーンの動きを支える部品です。
そのプーリー本体に割れがあれば、剛性の低下、異音、変速時の違和感につながる可能性があります。
また、割れが進行すれば、さらに大きなトラブルにつながる可能性もあります。
小さな割れであっても、見つけた時点で交換するべき状態です。
プーリーは消耗品です。
割れたプーリーをそのまま使い続ける部品ではありません。

ベアリングのガタ
プーリーで見落としやすいのが、ベアリングのガタです。
摩耗というと、どうしても歯先の減りに目が行きがちです。
しかし、実際に使用したプーリーを確認すると、歯先だけではなく、ベアリングにも明らかなガタが出ることがあります。
現行型は懐かしのセンタロン構造ではありませんが、プーリーのガタは新品でもまったくないわけではありません。
しかし、使用済みプーリーでガタの出たものと比べると、その差は一目瞭然です。
私の使用環境では、どちらかというとテンションプーリー側でベアリングのガタが大きくなりやすい印象があります。
テンションプーリーは、その名の通りチェーンの張り、つまりテンションを保つ部品です。
リアディレイラーの位置によっては、クランクから流れてきたチェーンを斜めに受け止めることになります。
そのため、ベアリングにも横方向の負担がかかりやすいのかもしれません。
一方のガイドプーリーは、テンションプーリーから渡されたチェーンをスプロケットの正しいギアへ送り出す部分です。
つまり、通常時はテンションプーリーほどチェーンを斜めに受けるわけではありませんが、変速時にはチェーンを横方向にずらす役割もあります。
このように、同じ形状の2つのプーリーであっても、それぞれ違う役割を持っています。
プーリーは、ただ軽く回っていればよい部品ではありません。
チェーンを正しい位置へ導く部品です。
そのため、リアディレイラーがいくら正確に動いていても、プーリー側にガタがあれば、その正確な位置や動きがチェーンへ伝わりきりません。
つまり、消耗によるガタによって、細かい異音や変速の遅れが起こることがあります。
特に12速は、チェーンもスプロケットも隙間が狭く、変速システム全体がかなり高精度に作られています。
プーリーのベアリングのガタは、見た目だけでは分かりにくいこともあります。
チェーンやスプロケットを交換する際には、プーリーの摩耗だけではなく、ベアリング部のガタも必ず確認したほうが良いです。
症状として何が起こるのか
では、プーリーが摩耗したり、割れたり、ガタが出たりすると、実際にどのような症状が出るのか。
分かりやすいのは音です。
12速は11速と比べても、カセットスプロケットの各ギアのクリアランスがかなり狭くなっています。
それでも、繊細な設計によってチェーンノイズは小さく抑えられています。
しかしプーリーの摩耗が進行してくると、チェーンの保持力がルーズになり、細かな異音や振動が出るようになってきます。
また、変速時のごく僅かな性能低下や、チェーンの動きが荒く感じられることもあります。
プーリーが摩耗しているからといって、変速がまったくできなくなるとは限りません。
どちらかといえば、ほんの僅かな変速性能の差として症状が出ることが多いです。
例えば、
・高負荷時の変速がわずかにワンテンポ遅れる。
・変速時の音やシフトショックが大きい。
・新品時のような滑らかさがない。
・チェーンの動きに少し曖昧さがある。
こういった症状です。
ここで難しいのは、チェーンやスプロケットを交換すると、実際にかなり良くなることです。
チェーンが摩耗していれば、チェーン交換で変速性能は大きく改善します。
スプロケットが摩耗していれば、スプロケット交換でさらに良くなります。
これは間違いありません。
ただ、それでもまだ完全には戻りきらないことがあります。
チェーンを替えた。
スプロケットも替えた。
それでも、どこか変速が新品時ほど気持ちよくない。
その最後の一押しになるのが、プーリーです。
リアディレイラーの動きをチェーンへ伝えているのはプーリーです。
そのプーリーが摩耗していたり、割れていたり、ベアリングにガタが出ていたりすれば、せっかくチェーンやスプロケットを新品にしても、本来の変速性能を出しきれません。
12速HYPERGLIDE+の変速性能は本当に素晴らしいです。
だからこそ、チェーンとスプロケットだけではなく、プーリーまで良い状態にしておきたいところです。
プーリーの交換をおすすめする理由
今回の本題にもなっているSHIMANO 12速用のプーリー(ULTEGRA)は、価格が税込2,408円です。
もちろん、部品代として見れば安くはありません。
しかし、12速用チェーン、スプロケット、リアディレイラー、そして12速コンポーネント全体の価格を考えれば、プーリーは決して高額な部品ではありません。
それでいて、プーリーは変速性能、異音、チェーンの動きに関わる重要な部品です。
チェーンもスプロケットも新品にした。
それでもプーリーが摩耗することで十分な変速性能を発揮できていないとしたら、非常にもったいないです。
特に、変速性能にこだわって12速コンポーネントを使用しているのであれば、プーリーはケチる場所ではないと思います。
プーリーは小さく、地味な部品です。
しかし、リアディレイラーの動きをチェーンに伝えるという意味では、非常に重要な部品です。
摩耗したプーリー、割れたプーリー、ガタの出たプーリーを使い続けるよりも、適切なタイミングで交換したほうが、12速本来の気持ちよい変速性能を維持しやすくなります。

チェーンやスプロケットを交換するタイミングで、プーリーも一緒に交換をお勧め致します。
まとめ
ロードバイクの変速性能は、チェーンとスプロケットだけで決まるものではありません。
もちろん、チェーン交換やスプロケット交換による改善効果は大きいです。
変速が悪くなったとき、まずチェーンやスプロケットを確認することは正しい判断です。
しかし、それでも変速の音や動きに違和感が残る場合、プーリーの状態も確認するべきです。
特に現行型の12速では、この傾向が強いと感じています。
HYPERGLIDE+は、11速と比べても一段階進化した素晴らしい変速性能を持っています。
しかし、その変速性能を100%使うためには、ただ調整が合っているだけではなく、各部品が良い状態であることが必要です。
つくづく思いますが、あの変速性能は、それぞれのパーツにおける本当に繊細な要素の積み重ねによって成り立っています。
チェーン、スプロケット、プーリー、リアディレイラーの動き、調整精度。
そのすべてが良い状態で揃ってこそ、12速本来の変速性能が発揮されます。
カスタマイズで新しいパーツを導入することは、とても楽しいことです。
しかし、それとともに、今使っているパーツが本来の性能をしっかり発揮できる状態にあるかどうかも非常に重要です。
弊店が大切にしているのは、本来パーツが持っている力を100%引き出してあげることです。
そのためには、派手なカスタムだけではなく、チェーン、スプロケット、プーリーといった消耗部品を適切な状態に保つことが欠かせません。
例えば、いつ交換したかわからない場合や、今のチェーンを1年以上、あるいは1万km以上使用している場合は、ぜひ一度、今回ご紹介したようなドライブトレイン周辺のパーツを新品に交換してみることをおすすめいたします。
チェーン、スプロケット、プーリーの状態が整うだけで、12速本来の素晴らしい変速性能に驚くことになるかもしれません。
小さな部品の状態まで整えてあげることで、ロードバイクは本来の性能をしっかり発揮してくれます。

