ロードバイクの洗車については、昔から意見が分かれるところです。
「こまめに洗ったほうが良い」という考え方もあれば、「あまり水をかけないほうが良い」という考え方もあります。
では、FF-Cycleではどう考えているのか。
もちろん、ロードバイクはいつもきれいな状態に保たれているのが理想です。
汚れたままよりも、きれいな状態のほうが良い。
これは間違いありません。
ただし、外観をきれいにすること以上に、内部を傷めないことを重視しています。
というのもFF-Cycleは、販売だけではなくメンテナンスを主とした業務を行っています。
そのため、特定のメーカーや特定のモデルだけではなく、さまざまなメーカー、さまざまな年式、さまざまな使用状況のロードバイクを見る機会があります。
その中で、ハブ、フリーボディ、ヘッドパーツ、BB周辺などに、サビや固着、ベアリングの傷みが出ている車体を見ることがあります。
もちろん、これらの不具合の原因をすべて洗車と断定することはできません。
雨天走行、保管環境、使用頻度、メンテナンス状況、部品の構造など、さまざまな要因が関係します。
ただ、実際にお客様へ普段の使い方を確認していくと、雨の日に積極的に乗っているわけではないにもかかわらず、水分による悪影響が疑われる傷み方をしていることがあります。
FF-Cycleでは、不具合が出ている場合、できるだけ普段の使い方や洗車方法、保管状況などを確認するようにしています。
これは原因を決めつけるためではなく、実際の修理や再発防止のための大切なヒントになるからです。
そのうえで、個人的な意見としては、必要がなければ、無理に洗車はしないほうが良いと考えています。
ただし、洗車をしないことで、かえって自転車へのダメージが大きくなるような状態であれば洗車は必要です。
そしてその場合でも大切なのは、ただ見た目をきれいにすることではありません。
自転車にできるだけダメージを与えない方法で汚れを落とすこと。
これが、FF-Cycleの洗車に対する基本的な考え方です。
洗車は「する・しない」の二択ではない
ロードバイクの洗車は、するのが正義、しないのが正義、という単純な話ではありません。
大切なのは、今その車体に洗車が必要な状態なのかどうかです。
例えば、以下のような状態であれば洗車をしたほうが良いと考えています。
- 雨天走行後で、チェーンや駆動系の汚れがひどい場合
- 泥や砂がドライブトレインに入り、ジャリジャリしている場合
- 海沿いや強風の日に走り、塩分を浴びている可能性がある場合
- 凍結防止剤が撒かれた路面を走った場合
- 汗やスポーツドリンクなどを放置すると悪影響が出そうな場合
- 通常の拭き取りだけでは汚れを落としきれない場合
こういった状態では、汚れを放置することで金属部品の腐食や、駆動系の摩耗につながる可能性があります。
このような場合は、洗車をする意味があります。
一方で、軽いホコリや表面の汚れ程度であれば、必ずしも水を使って洗車する必要はありません。
拭き取りや部分的な清掃で十分きれいにできるのであれば、わざわざ水や洗剤を使う必要はないと考えています。
洗車で見えない部分を傷めないことが大切
洗車をすると、見える部分はとてもきれいになります。
フレームがピカピカになり、チェーンやスプロケットもきれいになると、気持ちが良いものです。
しかし、ロードバイクの洗車で本当に大切なのは、見た目だけではありません。
見えるところをきれいにすることは、そこまで難しいことではありません。
難しいのは、見えないところを傷めずにきれいにすることです。
ロードバイクには、外から見えにくい部分にベアリングやグリスが使われています。
ハブ、フリーボディ、ヘッドパーツ、BB周辺などは、その代表です。
これらの部分に水や洗浄剤が入り込むと、すぐに不具合が出るとは限りません。
しかし、少しずつグリスが流れたり、内部に水分が残ったりすることで、時間が経ってから錆びや回転不良として出てくることがあります。
そのため、洗車では「どれだけきれいにするか」だけではなく、「どこに水をかけないか」「どこに洗剤を入れないか」が非常に重要です。
水分は思った以上に入り込む
洗車でまず気をつけたいのは、水分です。
ロードバイクは屋外で使うものですので、多少の雨や水分ですぐに壊れるものではありません。
しかし、だからといって、どこにでも水をかけて良いということではありません。
水は、想像以上に細かい隙間へ入り込みます。
特に注意したいのは、以下のような部分です。
- ヘッドパーツ周辺
- ハブ周辺
- フリーボディ周辺
- BB周辺
- シートポスト周辺
- ボルトの隙間
- ワイヤーやホースの出入り口
水分が入ったとしても、きちんと抜ければまだ良いです。
問題は、入り込んだ水が抜けにくい場所に残ることです。
表面はきれいに拭き上げられていても、内部に水分が残っている場合があります。
これが、後々の錆びや異音、ベアリングの傷みにつながることがあります。
強い洗浄剤を使うときの注意点
次に注意したいのが、洗浄剤やディグリーザーです。
チェーンやスプロケットの油汚れを落とすには、洗浄剤は非常に便利です。特に最近のディグリーザーは、浸透力や油を落とす性能が非常に高いものが多いです。
特にチェーン周りの汚れは、ただ水をかけただけではきれいになりません。
しかし、洗浄力が強いということは、油やグリスを落とす力も強いということです。
本来落としたいのは、チェーンやスプロケットに付着した汚れです。
ところが、使う場所や量、流し方を間違えると、ハブやフリーボディ、BB周辺など、本来グリスを残しておきたい部分にまで影響が出ることがあります。
強い洗浄剤を使うこと自体が悪いわけではありません。
問題は、必要以上に広い範囲へ使ったり、洗浄剤が入り込んでほしくない部分に流れ込んだりすることです。
洗浄剤は「よく落ちるから良い」というだけではなく、「どこまで落としてしまうのか」まで考えて使う必要があります。

最近のロードバイク構造は水に弱いものもある
昔のロードバイクに比べて、最近のロードバイクは見た目が非常にすっきりしています。
ケーブル類が内装され、ヘッド周りもきれいにまとめられています。
しかし、見た目がすっきりしていることと、水分に強いことは別の話です。
特にフル内装系のヘッド周りは、構造によっては水分が入りやすかったり、入った水が抜けにくかったりする場合があります。
トップカバー周辺のシール性が強くないものもありますし、構造上どうしても水分の侵入に気を使う必要があるものもあります。
また、完成車の状態では、必要な部分に十分なグリスが入っていないこともあります。
もちろん、すべての完成車がそうだという意味ではありません。
ただ、実際に整備をしていると、ヘッドパーツやBB周辺、ハブ周りの防水・防錆処理に差があることは少なくありません。
そのため、洗車に強いかどうかは、車体の構造だけではなく、どのように組まれているかにも左右されます。
洗車で特に注意したい場所
ヘッドパーツ周辺
ヘッドパーツ周辺は、できるだけ水や洗剤をかけたくない場所です。
特に昨今のフル内装構造の油圧ディスクロードの上部ヘッドパーツは、トップカバーの隙間から水が入り込むことが多くあります。
トップカバーの隙間から入った水分は、上部ベアリングはもちろん、フォークコラムを伝って下部ベアリング部に溜まり、ベアリングを錆びさせてしまうことがあります。
ハンドル周りやヘッド周りは、基本的にはじゃぶじゃぶ水をかけて洗うよりも、拭き取りを中心にしたほうが無難です。
汗汚れが気になる場合でも、いきなり大量の水をかけるのではなく、濡らしたウエスで拭く、必要な部分だけ処理する、といった方法のほうが良い場合もあります。
BB周辺
BB周辺も注意が必要です。
チェーンリングやチェーンを洗うと、どうしてもBB周辺に水がかかります。
ただし、BBの種類や構造によって、水分に対する強さは変わります。
SHIMANOのBBは、よく社外製BBとの空転性能比較に使われることがあります。
しかし、実際の使用環境で見た場合、SHIMANOのBBは耐久性や防水性を重視した作りになっていると感じます。
BB本体だけでなく、クランク軸周辺も比較的守られやすい構造です。
逆に社外製BBでクランク軸周辺に水が入りやすい構造の場合、洗車後に水分が残ることで、ベアリングやクランク軸に悪影響が出ることがあります。
BB周辺は、汚れやすい場所でありながら、水を入れたくない場所でもあります。
そのため、水を使う場合は狙う場所、方向等を注意して、洗浄剤も広げすぎないことが大切です。
ハブ・フリーボディ周辺
ハブとフリーボディ周辺は、洗車で特に気を使う場所です。
フロントハブは、リアに比べて雨天走行でも比較的汚れづらく、水を使わなくてもきれいにしやすい場合が多いです。
問題になりやすいのはリアホイールです。
スプロケットをきれいにしたい気持ちはよく分かります。
しかし、リアハブやフリーボディの隙間に水やディグリーザーが入ると、内部のグリスに影響が出ることがあります。
特に注意したいのは、ディグリーザーをかけた状態でフリーボディを回転させることです。
フリーボディ周辺に洗浄剤が付着した状態で回すと、洗浄剤が内部へ入り込む可能性があります。
スプロケットを洗う場合でも、できるだけフリーボディを回さず、ホイールの角度を変えながら洗うほうが安全です。
少し手間はかかりますが、この手間がハブやフリーボディの寿命に関わってくることがあります。

おすすめしない洗車方法
洗車の方法によっては、汚れを落とすつもりが、かえって自転車を傷めてしまうことがあります。
特に注意したいのは、高圧洗浄と、車体を逆さまにした状態での洗車です。
どちらも一見すると効率が良さそうに見えますが、ロードバイクの場合は、水が入ってほしくない場所に水分が入り込むリスクがあります。
高圧洗浄
ロードバイクの洗車では、高圧洗浄は基本的におすすめしません。
短時間で汚れを落とせるので便利に見えますが、ロードバイクには細かい隙間が多くあります。
水圧が高いと、本来入ってほしくない場所に水分を押し込んでしまう可能性があります。
特に、ハブ、BB、ヘッドパーツ、フリーボディ周辺に向けて高圧で水を当てるのは避けたほうが良いです。
また、SHIMANOのパーツでも、高圧洗浄を避けるよう案内されているものがあります。
そのため、ロードバイクの構造や各部のシール構造、組まれ方を理解していない状態での高圧洗浄はおすすめしません。
洗車は、強い水圧で一気に汚れを飛ばす作業ではありません。
ロードバイクの場合は、汚れを落とすことと同じくらい、内部に水を入れないことが重要です。
車体を逆さまにした洗車
洗車の際に、車体を逆さまにする方法もおすすめしません。
通常の状態であれば、ある程度水が流れていく方向があります。
しかし、車体を逆さまにすると、本来水が入りにくい場所へ水が流れ込むことがあります。
特にヘッドパーツ周辺やフレーム内部は、通常の使用状態とは水の流れ方が変わります。
フレームには水抜き穴がある場合もありますが、それは基本的に通常の向きで水が抜けることを前提にしていることが多いです。
逆さまにした状態で洗うと、かえって水が抜けにくい場所に入る可能性があります。
ロードバイクは、ただ水をかければ良いというものではありません。
どの向きで水が流れるのか、どこに水が残りやすいのかを考えながら洗うことが大切です。
洗車後の処理まで含めて洗車です
洗車は、洗って終わりではありません。
洗車後の処理まで含めて洗車です。
水分が残りやすい場所は、しっかりと拭き取る必要があります。
チェーンや駆動系は、洗浄後に必要な注油を行います。
ボルト周辺、ブレーキ周辺、スプロケット周辺、プーリー周辺なども、できる範囲で水分を残さないようにします。
エアブロワーを使う場合もありますが、使い方には注意が必要です。
エアで水分を飛ばすつもりが、かえって奥へ押し込んでしまったり、グリスを押し出してしまうこともあります。
便利な道具ほど、使う方向や場所を間違えると逆効果になることがあります。
少なくとも、水分が内部に入った可能性がある場合は、洗車後にフレームやリム内部へ水分が残っていないか確認することをおすすめします。
まとめ:必要なときに、傷めない方法で洗う
ロードバイクをきれいな状態に保つことは、とても大切です。
雨天走行後、泥汚れ、塩分、ひどい油汚れなどを放置すれば、かえって自転車を傷めることがあります。
そのような場合は、洗車をしたほうが良いです。
一方で、必要がない状態で、頻繁に水や洗剤を使って洗うことが良いとは限りません。
ロードバイクには、水や洗浄剤が入ってほしくない場所が多くあります。
FF-Cycleでは、ロードバイクの洗車について、以下のように考えています。
・必要がなければ、無理に水を使った洗車はしない。
・洗車をしないと落とせない汚れや、そのまま使い続けることのほうがダメージが大きいと考えられる場合は洗車を行う。
・洗車をする場合でも、水を使う場所、リスクが高い場所を考慮して行う。
・洗浄剤は適切なものを、必要な場所にだけ使う。
・内部を傷めないことを優先する。
・洗車後の水抜き、拭き取り、注油まで含めて考える。
チェーンを外して超音波洗浄を行うような徹底した清掃についても、それ自体を否定することはありません。
ただし、きれいにすることが目的になりすぎると、本来の性能を落としたり、パーツの寿命を短くしてしまったりすることがあります。
ロードバイクの洗車は、ただ外観をきれいにする作業ではありません。
必要な汚れを落としつつ、ハブ、BB、ヘッドパーツ、フリーボディなどの内部をできるだけ傷めないように行う作業です。
本来の目的は、ロードバイクを良い状態で長く使うことです。
FF-Cycleでは、必要なときに、必要な範囲を、できるだけ自転車に負担をかけない方法で洗う。
その考え方を基本にしています。


