【トレ日記】富士ヒル直前、VO2maxをやめた理由|高強度より大切なこと

富士ヒルに向けた実走練習で使用したロードバイクとボトル、ホイールの写真 トレーニング
富士ヒルに向けた実走練習。高強度を積み増すよりも、今はSSTとテンポ、そして回復を優先しました。

富士ヒルまで一ヶ月を切り、いよいよ残りわずかとなりました。

この時期になると、レース前の最後の仕上げとしてVO2maxや高強度インターバルを入れる人も多いと思います。

実際、VO2maxトレーニングは能力を引き上げるために有効な練習だと思います。
ワタクシ自身も、4月ぐらいからVO2maxを入れ始めたことで、明らかに一段階上がった感覚がありました。

ですので、今回の記事は「VO2maxは不要」という話ではありません。

VO2maxで伸びる人は、取り入れたほうが良いと考えております。
特に、集団走行・トレインを組んで走る場合は多少なりとも、パワーの上げ下げのある展開に対応する必要があり、短時間の高出力が必要な人にとっては、大切な練習だと思います。

ただ、今回のワタクシの作戦、疲労状態、そして富士ヒルでの走り方を考えると、VO2maxをさらに増やすよりも、SSTと回復を優先したほうが良いと判断しました。

今回は、富士ヒル直前にあえて高強度トレーニングのVO2maxをやめた理由について書いてみようと思います。

春、VO2maxで成長した

まず最初に書いておきたいのは、VO2maxトレーニングは効いたということです。

4月に入り、気温の上昇とともに練習に入れ始めた直後は、明らかにパンッと一段階上がった感覚がありました。

教科書的な話ではありますが、今までのSSTやテンポ走だけでは入りにくかった領域に刺激が入ったことが良かったのだと思います。

これは間違いないことです。

ですので、VO2maxトレーニングを否定することはまったくありません。

もちろん高強度を入れることで伸びる人もいると思いますし、レースの展開によっては必要性が高い人もいると思います。

特に、富士ヒルで脚の合うトレインに乗る場合や、集団内で上げ下げに対応する必要がある場合は、VO2maxや短時間高強度の刺激は重要になると思います。

問題は、VO2maxが良いか悪いかではありません。

今の自分にとって、それが本当に必要な刺激なのか。
そして、その刺激を回収できる状態にあるのか。

ここが重要だと思います。

その後、SSTの伸びが止まる

前述のようにVO2maxを入れ始めたことで、一度は明らかに一段階上がりました。

しかし、その後に停滞しました。

VO2maxができなくなったわけではありません。
SSTがこなせなくなったわけでもありません。
テンポ走が極端にきつくなったわけでもありません。

ただ、肝心のSSTが思ったほど伸びなくなりました。

SSTの伸びは単純に絶対的なパワー値だけではなく、心拍数の数値も重要視しています。

冬の間、SSTやテンポ走を中心にしっかり積み上げてきました。

本来であれば、富士ヒルが近づいてくるこの時期に、SSTの質がもう一段階上がってきても良いはずでした。

VO2maxを入れ始めた当初はあれだけ順調だったのですが、その後は感覚だけではなく、数値で見ても明らかに伸びが鈍くなっていました。

今思えば、これがひとつの信号だったのかもしれません。

「もっと高強度を入れなければ伸びない」のではなく、むしろ「入れた刺激を回収できていない」のではないか。

そう考えるようになりました。

速くなるためには、休息が必要

トレーニングでは、刺激を入れることが大切です。

これは間違いありません。

ただし、刺激を入れれば、その場で強くなるわけではありません。

刺激を入れて、回復して、その刺激を身体が回収する。
そこまでできて、初めて成長につながります。

高強度を入れれば伸びる、という話は間違いではないと思います。

しかし、それは身体がその刺激を吸収できる状態であり、受け皿がしっかり整っている場合の話です。

疲労が抜けていない状態でさらにVO2maxを重ねると、伸びるどころか停滞することもありますし、場合によっては下がってしまうこともあります。

特に40歳を超えてくると、若い頃のように無茶をしても何とかなる、という感じではなくなってきます。

悲しいことに、回復力の低下は確実に感じます。

もちろん、年齢を言い訳にしたいわけではありません。

ただ、年齢や回復力を無視して、若い頃と同じように高強度を重ねていけば良い、というわけでもないと思います。

速くなるためには、練習が必要です。

しかし、成長するためには休息も必要です。

むしろ、入れた刺激をしっかり回収できなければ、練習の効果は表に出てきません。

今回の停滞は、VO2maxの刺激が足りないというよりも、回復にかける時間が足りていなかったのだと思います。

今年の富士ヒルの作戦

もうひとつ大きかったのは、今年の富士ヒルでの走り方です。

今年は、基本的に集団走行に頼らない作戦で考えています。

もちろん、脚の合うトレインに入れるなら、それはとても大きな武器になります。

富士ヒルのようなコースでは、空気抵抗を減らせることは大きいですし、周りとペースを合わせることで走りやすくなる場面もあると思います。

ただし、富士ヒルに出る人全員が、脚の合う人ときれいにトレインを組めるわけではありません。

個人参戦の人も多いと思います。

また、脚の合わない集団についていくことで、必要以上に脚を使ってしまうこともあります。

上げ下げが多く、自分のペースを崩してしまうくらいなら、一人で淡々と走ったほうが良い場合もあると考えました。

そうなると、今必要なのは、短時間の上げ下げに何度も対応する力よりも、SSTから閾値付近の強度を最後まで崩さずに踏み続ける力です。

富士ヒルは、信号もなく、下りで脚を止めるような区間もありません。

とにかく、淡々と踏み続ける必要があります。

そう考えると、VO2maxをさらに増やすよりも、SSTとテンポ、そして回復を優先したほうが、今の自分の作戦には合っていると判断しました。

週中のVO2maxをキャンセル

そこで、思い切って週中に予定していたVO2maxをキャンセルしました。

高強度をやめることに不安がなかったのかと言えば、実はそこまで大きな不安はありませんでした。

1回や2回VO2maxをキャンセルしたところで、急に弱くなるわけではない、ということは経験上分かっていたからです。

それよりも嫌だったのは、SSTやテンポ走の伸びが止まっていることです。

冬場にコツコツと積み上げたベースがあるので、もっともっと伸びるはずだと考えていたからです。

今の自分にとって、富士ヒルで一番大切なのは、VO2maxの数値を追いかけることではありません。

SSTから閾値付近の強度で、最後まで崩れずに走れることです。

そのためには、追加の高強度よりも、今まで積み上げてきた練習の効果をきちんと表に出すことのほうが大切だと考えました。

キャンセル後 週末のテンポ走の結果

VO2maxをキャンセルした週末のテンポ走で、Garminに表示されたNPとTSSの記録
VO2maxをキャンセルした週末のテンポ走。感覚だけではなく、NPやTSSの数値でも一段階上がったことを確認できました。

VO2maxをキャンセルして、回復に少し余裕を持たせました。

すると、その週末のテンポ走では、明らかに一段階上がった感覚がありました。

パワー・心拍の数値を見ても明らかでした。

そして、同じ強度での余裕度、後半の伸び方、走り終えたあとの疲労感が明らかに違いました。

「これは一段階上がったな」

自分でもはっきりと感じることができました。

そこでようやく、回復にかける時間が足りていなかったのだと思い知りました。

VO2maxをやめたから伸びた、というより、VO2maxをやめたことで、それまで入れてきた練習の効果が表に出てきた。

今回の感覚としては、こちらのほうが近いです。

高強度をやめたことが成長につながったのではなく、刺激を入れすぎないことで、ようやく身体がその刺激を回収できたのだと思います。

やることよりも、やめる判断が大切なことも

レース前だから高強度をやらなければいけない。

そう考えたくなる気持ちはよく分かります。

トレーニングの教科書的な書籍である『パワー・トレーニング・バイブル』にも、高強度走の重要性については書かれています。

周りがVO2maxや高強度インターバルを入れていると、自分もやらなければいけないような気持ちになります。

しかしレース間近、最後の最後で無理をして崩れるという話も、決して珍しくありません。

はっきり言って大切なのは、VO2maxをやるか、やらないかではないと思います。

これはVO2maxに限ったことではありませんが、

今の自分にとって、その練習が本当に次につながるのか。
その刺激を回収できる状態にあるのか。
そして、自分の走り方や作戦に合っているのか。

そこを見て判断することだと思います。

やることよりも、やめる判断のほうが大切なこともあります。

特に富士ヒル直前のような時期は、焦って積み増すことよりも、今ある力をしっかり出せる状態に整えることのほうが重要になる場面もあると思います。

前回の記事ともつながる話です

以前、「私がインターバルトレーニングを止める日」という記事を書きました。

その記事では、その日のメニューを無理に完遂することよりも、次につながるかどうかを見て止める判断をする、という話を書きました。

今回のVO2maxをやめた判断も、根本は同じです。

その日だけを見れば、高強度をやめたという判断です。

しかし全体で見れば、SSTとテンポの質を取り戻すための判断でした。

前回の記事はこちらです。

関連記事

私がインターバルトレーニングを止める日

インターバルトレーニングを無理に完遂するのではなく、次につながるかどうかで止める判断をする、という内容です。

最後に

今回の記事は、VO2maxトレーニングを否定するものではありません。

VO2maxで伸びる人は、確実にやったほうが良いと思います。

集団走行で上げ下げに対応する必要がある人や、短時間高強度の能力を高めたい人にとっては、とても重要な練習だと思います。

ただ、今の自分の場合は、少し違いました。

今年の富士ヒルでは、基本的に集団走行に頼らず、自分のペースで淡々と走る作戦です。

そして、直近の状態を見る限り、VO2maxをさらに積み増すよりも、SSTとテンポ、そして回復を優先したほうが良いと判断しました。

高強度を入れれば伸びる。

これは間違いではないと思います。

ただし、それは吸収できる状態で入れた場合の話です。

疲労が抜けていない状態でさらに刺激を重ねても、伸びるどころか停滞することもあります。

今回の自分にとっては、VO2maxを増やすことではなく、SSTとテンポ、そして回復を優先することが、富士ヒルに向けた最善の選択だったのだと思います。

富士ヒルまで、あと少しです。

ここから大切なのは、焦って何かを積み増すことではなく、今まで積み上げてきたものを、当日にしっかり出せる状態に整えることだと思います。