2026年富士ヒルでゴールドを獲得した機材紹介。軽さよりも重視したこと

2026年富士ヒルで使用したWINSPACE M6 MILEMASTERのレース仕様バイク その他
2026年富士ヒル本番で使用したWINSPACE M6 MILEMASTERです。

今年の機材選びで重視したこと

まず最初に、今年の富士ヒルで機材に求めたことについてです。

従来、ヒルクライムでは「軽さが正義」と言われることが多く、過去には私自身も数十g、場合によっては数g単位の軽量化を行ってきました。

もちろん、ヒルクライムにおいて軽さが重要であることは間違いありません。

ただ、昨今では軽さだけではなく、空力性能、安定感、転がり、登坂中の扱いやすさ、そして後半まで脚を残せることまで含めて考えたほうが、結果的に速く走れるのではないかと考えています。

特に今年は、単独走でのゴールドは厳しいということをデータ上で知ったこともあり、トレインに乗り、集団内で無駄なく走ることも重要になると考えていました。

そのため、極端な軽量化よりも、空力性能、コンプライアンス、ケイデンスの自由度、集団走行での扱いやすさまで含めて、富士ヒル全体としてマイナスが少ない機材構成を意識しました。

つまり今年の機材選びは、従来のヒルクライムで重視されてきた軽さ一辺倒の考え方ではなく、多少の重量増を許容してでも、レース全体で速く走るためのバイク構成を目指したものです。

使用したバイク構成

今回の富士ヒルで使用したバイク構成は、以下の通りです。

パーツ使用機材
フレームセットWINSPACE M6 MILEMASTER Mサイズ
ハンドルWINSPACE HYPER ハンドルバー 380mm
ホイールLUN HYPER LIGHT D45
フロントタイヤGOODYEAR Eagle F1R SUPERSPORT R 28C TLC
リアタイヤMICHELIN Power Cup TLR 30C
コンポーネントSHIMANO ULTEGRA R8170 シリーズ
クランクSHIMANO DURA-ACE FC-R9250-P
ペダルSHIMANO DURA-ACE PD-R9100
ブレーキキャリパーSHIMANO DURA-ACE BR-R9270
ブレーキパッドVesrah TRAIL
ディスクローターSRAM Centerline X Rotor 160mm/140mm
サドルPrologo NAGO R4 PAS 3DMSS NACK
シューズSHIMANO RC903
インソールSOLESTAR BLK2
ウェアBIORACER EPIC ワンピース

完成車重量は、サイコンを除いた状態で7.785kgでした。
サイコンとボトルを含めると、おそらく8.5kg前後にはなっていたと思います。

ちなみに昨年はSLC3で出場しましたが、そのときの重量は7.075kgでした。

富士ヒルに出場するバイクとしては、決して軽量な部類ではないと思います。むしろ、過去に自分が富士ヒルで使用してきたバイクの中では、最も重い構成でした。

このあとは、特にこだわりがある機材について、なぜその構成にしたのか、実際に富士ヒル本番でどう感じたのかを書いていきます。

富士ヒル仕様のWINSPACE M6 MILEMASTERを実測している様子

フレーム:WINSPACE M6 MILEMASTER

フレームは、WINSPACE M6 MILEMASTERを使用しました。

ここ最近はWINSPACEのバイクを何モデルも乗り継いできていますが、正直なところ、富士ヒル本番で使用するフレームは、かなりギリギリまで悩んでいました。本番の2〜3週間前までは、まだ最終決定できていなかったと思います。

最後まで悩んでいたのは、今回使用した空力特性に優れたM6 MILEMASTERと、軽量オールラウンドモデルのSLC5です。

実測重量の比較は以下の通りです。

フレームセットフレーム重量フロントフォーク重量
WINSPACE M6 MILEMASTER1116g516g
WINSPACE SLC5826g360g

単純に重量だけで見れば、明らかにSLC5のほうが軽量です。
フレームで約290g、フロントフォークで約156gの差があり、合計では約446gの差になります。

ヒルクライムと考えると、この重量差は決して小さくありません。

それでも、今回の富士ヒルでは最終的にM6 MILEMASTERを選択しました。

理由は、勾配やレース展開を考えたときに、富士ヒルでは約450gの重量差以上に重視したい部分があったからです。

まず大きかったのは、踏んだときのフィーリングです。

M6はSLC5より重量こそありますが、踏んだときの感触は抜群に良く、ケイデンスの幅を広く使いやすいフレームだと感じていました。元気なときの高ケイデンスでも、限界に近い場面で少しケイデンスが落ちた状態でも踏みやすい。疲労時にケイデンスを変えながら走れることは、富士ヒルのように長く踏み続けるレースではかなり重要だと考えました。

もうひとつは、空力性能です。

WINSPACEのバイクは、実際に乗ってみると想像以上に空力性能の高さを感じます。その中でも、M6は現行WINSPACEの中で最も優れた空力性能を誇るモデルです。

特に富士ヒルでは、最後の平坦区間が非常に重要になります。おそらく今年の自分にとっては、かなりギリギリの戦いになると感じていました。単独走になったとしても、集団走行になったとしても、最後の平坦区間をどう越えるかによって、その後の最後の登りにかけられる力が変わってきます。

つまり、自分の中での富士ヒルは、単純な軽量ヒルクライムではありませんでした。

登りだけではなく、レースとしての集団走行、後半の平坦区間、疲労時の扱いやすさまで含めたトータルバランスで考えた結果、今年はM6 MILEMASTERを選びました。

タイヤ:重量よりも転がりと安定感を重視

タイヤの選択も、昨年までとは大きく変えました。

以前は、ヒルクライム用としてできるだけ軽いタイヤを選びたいという考えが強くありました。しかし今年は、単純な重量よりも、転がり抵抗、車体の安定性、そして身体が安定することで結果的にパワーを出しやすくなることを重視しました。

今回のタイヤ構成はこちらです。

位置タイヤ空気圧
フロントGOODYEAR Eagle F1R SUPERSPORT R 28C TLC4.2bar
リアMICHELIN Power Cup TLR 30C4.0bar

前後ともチューブレスで使用しました。

前後で異なるモデルを使用しているのには、明確な理由があります。

フロントに使用したEagle F1R SUPERSPORT Rは、非常にしなやかでフィーリングが抜群に良いタイヤです。軽さ、反応、接地感のバランスが良く、決戦用タイヤとしてはかなり好印象でした。ただし、決戦用タイヤという性格上、耐久性や耐パンク性については、普段使い用のタイヤよりも少し気を使う必要があると感じています。

そのため、自分の中ではあくまでも「決戦用タイヤ」という位置づけです。

一方で、リアに使用したMICHELIN Power Cup TLRは、普段の平地練習でのフィーリングをかなり重視して選びました。

重量だけで見れば、もっと軽い選択肢もあります。しかしPower Cupは、振動や衝撃の吸収性が非常に良く、よく転がり、路面にしっかり粘る感覚があります。特にリアタイヤは、乗り心地やトラクション、後半の身体への負担にも関わる部分ですので、今回は軽さよりも安定感と転がりを重視しました。

スバルラインは、見た目にはきれいな路面に見えますが、実際にはギャップや細かな荒れも少なくありません。

さらにレースとなると、道路幅いっぱいを使って走る場面もあります。ライン取りによっては路肩寄りを走ることもありますし、数日以内にまとまった雨が降った場合などは、砂利や細かなゴミが路肩に浮きやすくなります。そう考えると、富士ヒルでもパンクリスクは決して低くないと思います。

その面でも、チューブレスは有利だと考えています。

チューブレスであれば、小さな穴であればシーラントが塞いでくれる可能性があります。また、万が一パンクした場合でも、クリンチャーのように一気に空気が抜けるケースは比較的起こりにくいと考えています。

特にフロントタイヤのパンクは怖いです。

クリンチャーのフロントが一気に抜ける怖さを知ってしまうと、レースでチューブレスを使いたくなる理由はかなり大きいです。富士ヒルは登りだけでなく最後の平地区間は40km/h以上普通にでますし、下山もあります。速さだけではなく、安全面まで含めて考えても、今回のタイヤ構成はかなり納得できる選択だったと思います。

ブレーキ

ブレーキキャリパーは、SHIMANO DURA-ACE BR-R9270を使用しています。

ロードバイク用の油圧ディスクブレーキキャリパーとしては、世界的に見ても最高峰クラスの製品だと思います。軽量性、制動力、コントロール性、メンテナンス性のバランスが高く、個人的にも安心して使えるブレーキキャリパーです。

組み合わせるブレーキパッドは、Vesrah TRAILです。

Vesrahのラインナップでは、ROAD、TRAIL、DOWNHILLを使用したことがあります。その中で今回TRAILを選んだ理由は、初期制動力の高さとコストバランスです。

ROADは、高速域からの安定性や静音性を重視した印象で、初期制動から比較的マイルドでコントローラブルです。一方でTRAILは、ラインナップの中ではちょうど中間的な性格で、街乗りから使いやすい位置づけだと感じています。高速域からの安定性に特化するというよりも、握り始めからしっかり効く感覚があり、扱いやすいパッドです。

ROADやDOWNHILLに比べると、耐フェード性では若干落ちる部分もあるようですが、私の使い方では大きな差を感じる場面はありませんでした。そのため、今回はコストバランスも含めてTRAILを使用しています。

Vesrahのパッドはどれもそうですが、セミメタル系のパッドとして非常に扱いやすい印象があります。SHIMANO純正パッドと比べても、食いつきが良く制動力の立ち上がりもよく、効きそのものにも、コントロール性にも不満はありません。

ディスクローターは、SRAM Centerline X Rotorを使用しています。サイズはフロント160mm、リア140mmです。

ディスクローターについては、SHIMANOのサンドイッチ構造以外であれば、個人的にはそこまで大きなこだわりはありません。というのも、ディスクローターの違いは、ブレーキパッドやキャリパーほど大きな差として感じていないからです。

もちろん、摩耗が進んだローターは別です。摩耗したローターでは制動力やフィーリングが悪くなるだけでなく、安全性にも関わりますので、レース前にはローターの厚みや状態をしっかり確認しておく必要があります。

富士ヒルは基本的には登りのレースですが、下山もあります。
その意味でも、ブレーキまわりは軽量化だけで考える部分ではありません。しっかり効き、コントロールしやすく、下山まで安心して使えることを重視しました。

シューズ・インソール:RC903とSOLESTAR BLK2

シューズを新しく購入したのは、実にレース10日前でした。

使用したのは、これまでと同じSHIMANO RC903です。同じモデルなので、そこまで大きな違和感はないだろうと思っていましたし、今まで使っていたシューズがあまりにもボロボロになっていたこともあり、思い切って買い替えることにしました。

実際、シューズそのものの差は、そこまで大きく感じませんでした。

しかし、インソールはまったく違いました。

新しいシューズに替えたタイミングで、最初はSHIMANOのカスタムフィットインソールを使用してみました。しかし、これがどうにも合いませんでした。悪いインソールというわけではないと思いますが、自分の足が完全にSOLESTAR型になってしまっていたのかもしれません。

そこで、これまで使っていたSOLESTAR KONTROL2を継続することも考えましたが、せっかくの富士ヒル本番用です。ここは富士ヒルスペシャルということで、最上位モデルのSOLESTAR BLK2を導入しました。

BLK2は、インソールだけで25,000円を超える恐ろしい価格の製品です。

ただ、実際に使ってみると、その良さはかなりはっきり分かりました。もともとKONTROL2に慣れていたこともあり、導入は非常にスムーズでした。数回使用した時点で、本番採用はほぼ決まりました。

BLK2はかなり良いです。

KONTROL2の良さをそのままに、さらにダイレクト感を高め、表面のグリップも上げたような印象です。踏み込んだときの足裏の安定感が高く、シューズの中で足が無駄に動きにくくなります。その結果、ペダルへ力を伝えやすく、特に高出力時や疲労してきた場面での安定感が非常に良くなりました。

富士ヒル本番のように、1時間以上ギリギリの状態で踏み続けるレースでは、足元の安定感はかなり重要です。シューズの中で足が動いたり、踏み位置が曖昧になったりすると、それだけで余計な疲労につながります。

その意味でも、今回BLK2を導入したことはかなり正解だったと思います。

KONTROL2を使っていて、そろそろヘタってきたと感じている方であれば、BLK2への交換はかなりおすすめできるカスタムです。価格は高いですが、足元の安定感や踏み心地を重視する方であれば、十分に試す価値はあると思います。

ウェア・小物:BIORACER EPIC ワンピースと防寒対策

ウェアは、BIORACER EPIC ワンピースを使用しました。

空力を意識したワンピースタイプのウェアで、このあたりは言わずもがなです。富士ヒルは登りのレースではありますが、後半には平坦区間もありますし、集団走行になる可能性もあります。そう考えると、ウェアの空力性能も無視できない要素だと思います。

当日の気温は昨年と近かったため、ウェアリングも昨年とほぼ同じ構成にしました。

例年の経験上、整列時に冷えすぎないくらいのウェアを着ておけば、標高が上がっても凍えるほど寒くなることはあまりありません。当日の5合目付近の走行中の気温は10℃前後でした。レース中は身体もかなり温まっていますが、汗冷えや冷えによるパワー低下を避けたいので、やや厚着寄りの判断だったかもしれません。

上半身は、メッシュインナーに夏用インナーを重ねました。

自分は足先の冷えにかなり弱く、寒さで足先がしびれやすいタイプです。そのため、昨年同様にSHIMANOのエアロ系トゥカバーを使用しました。冷え対策としてはもちろんですが、シューズ周りのわずかな空力効果も狙っています。

富士ヒルは「暑すぎてもだめ、冷えすぎてもだめ」というウェア選びが難しいレースです。今回は気温、整列時間、後半の標高まで含めて考えると、かなりちょうど良い構成だったと思います。

実際に走ってどうだったか

はっきり言ってしまえば、今回使用したM6は、昨年使用したSLC3と比べて約700g重い構成です。

タイヤもサドルも、重量より空力性能やコンプライアンスを重視した選択です。唯一、軽量化に振ったパーツと言えば、ディスクローターぐらいだったと思います。

さらに今年は、整列時に身体が冷えるのが嫌だったこともあり、万が一のことも考えて、下山用として配布されていたビニール袋、スマートフォン、補給食を4本持って走りました。

持っていた補給食は、エネもち、カルノパワーエナジー、スポーツようかんコーヒー味、アンパワーバナナ味です。実際に使用したのは、アンパワーバナナ味とスポーツようかん半分ほどでした。

当日の映像を見た家族からも、「ポケットいっぱいだね」と言われるくらいには、ポケットにいろいろ入っていました。(笑)

ボトルは800mlボトルを使用し、中身は半分以上入れていました。下山時にもまだしっかり飲めるくらいの量は残っていたので、純粋な軽量化という意味では、かなり重めの装備だったと思います。

つまり、今年の富士ヒルは、本当に軽量化とは程遠い構成でした。

それでも、空力性能、コンプライアンス、安定感、そしてレース全体を通しての扱いやすさを重視した結果、この構成を選びました。

では、実際にどうだったのか。

はっきり言って、勾配がきつい区間も含めて、重さを強く感じることはありませんでした。

もちろん、レース本番という特別な状況だったこともあると思います。それでも、後半まで脚の残り方は練習時よりも良かったように感じました。相変わらずパワーはまったくと言ってよいほど出ていませんでしたが、車体が安定していて、限界近い状態でも余計なロスが少なかったことは、今回の富士ヒルではかなり大きかったのかもしれません。

特に良かったのは、やはりコンプライアンスの部分です。

ちょっとした段差やギャップでもトラクションが抜けにくく、車体の上で身体を安定させやすい。これは細かなパワーロスを減らすことにつながります。

一つひとつは小さな差かもしれません。しかし、限界ギリギリの状態で1時間以上走り続ける富士ヒルでは、こうした細かな負担の積み重ねが、後半のダメージとして現れてくると思います。

その意味でも、今回の選択は個人的には良かったと感じています。

そして、もうひとつ大きかったのが、奥庭手前の登りから最後の平坦区間へ切り替わる場面です。

ここは完全に勝負どころだと思っていました。登り終えてすぐに平坦へ入り、集団のスピードが上がる区間です。ここで遅れると一気にタイムを失いますが、今年はかなりスムーズに対応できました。

また、当日は霧で視界が悪く、平坦区間やトンネル内の路面状況も見えにくい場面がありました。そういった状況では、軽さよりも車体の安定感やタイヤの安心感がかなり効いていたと思います。

結果として、今回の機材構成は、自分にとってかなり正解に近いものでした。

絶対的な軽さだけを追った構成ではありません。むしろ、重量だけで見れば昨年より明らかに重いです。

それでも、富士ヒルを単なる登りのタイムトライアルではなく、集団走行、後半の平坦区間、視界不良、疲労時の安定感まで含めたレース全体として考えれば、今年の機材選びはかなり良かったと思います。

そしてこのバイクは、富士ヒルだけで終わる構成ではありません。

これから始まる平地系のレース参戦にも、このまま使っていけるくらい、非常に良いオールラウンドバイクとして仕上がっていると感じています。

公式ページ
WINSPACE M6 MILEMASTER

今回の富士ヒルで使用したWINSPACE M6 MILEMASTERの公式ページです。フレームの仕様や詳細はこちらから確認できます。

公式ページを見る