同じ出力で走るのであれば、転がり抵抗が低いタイヤのほうが速く走りやすくなります。
これは基本的に間違いありません。
最近では、タイヤ単体の重量だけではなく、転がり抵抗や空気圧、タイヤ幅まで含めて考えられることも増えてきました。
以前のように「軽いタイヤほど速い」と単純に考えるのではなく、実走でどれだけ少ない抵抗で走れるかを重視する流れになってきていると思います。
ただ、実際にタイヤを交換して走ってみると、やはりそれだけでは語りきれない部分があります。
今回は、耐久性を重視した少し硬めのタイヤから、決戦用に近いハイエンドレースタイヤへ交換しました。
そこで改めて感じたのは、タイヤの速さは転がり抵抗だけではなく、タイヤそのものの動き方にも大きく左右されるということです。
転がり抵抗は重要
まず大前提として、転がり抵抗は速さに直結する性能ですので非常に重要です。
転がり抵抗が低いタイヤは、同じパワーでも速度を維持しやすくなります。
これは平坦の巡航時だけではありません。
惰性で進む下りや、リアタイヤに荷重がかかりやすい上りでも、その差は少なからず効いてくると感じています。
以前は、ヒルクライムではとにかく軽いタイヤが有利と考えられることも多かったと思います。
しかし現在では、ライド全体で考えると、タイヤ単体の重量差よりも転がり抵抗の差のほうが大きく効く場面も少なくありません。
もちろん、タイヤ選びにおいて重量がまったく関係ないわけではありません。
登坂や加減速が多い場面では、重量も当然影響します。
それでも、ロードバイクで実際に走る時間全体を考えると、転がり抵抗の低さは非常に大きな要素です。
そのため、まずは「転がり抵抗の低いタイヤは速い」という前提は変わりません。
ただし、実際に走ってみると、速さを決めている要素はそれだけではないと感じます。
転がり抵抗以外の速さを決める性能とは
ただし、実走ともなると、転がり抵抗だけでタイヤの速さがすべて決まるわけではありません。
今回、特に強く感じたのはタイヤそのもののしなやかさです。
耐久性や耐パンク性能を重視したタイヤは、安心感がある一方で、タイヤ全体に少し硬さを感じることがあります。
対パンクベルトの有無や構造も影響すると思いますが、それだけではありません。
トレッドゴムの質、トレッドの厚み、サイドウォールのしなやかさなども、乗り心地や路面追従性に直接影響を与える要素になると考えています。
同じ空気圧でも、路面の細かな凹凸をダイレクトに拾いやすかったり、バイク全体が少し跳ねるように感じたりすることがあります。
一方で、決戦用に近いハイエンドタイヤでは、タイヤごとの差はありますが、同じような空気圧でもタイヤがしなやかに動き、路面の細かな凹凸を吸収してくれる感覚がありました。
もちろん、タイヤのしなやかさは耐久性や耐パンク性能とトレードオフになる面もあると思います。
ただ、これは単なる乗り心地の話ではありません。
バイクが跳ねにくく、
身体が暴れにくく、
ペダリングが乱れにくくなります。
結果として、速度を維持しやすくなり、スピードにつながります。
これは、第三者機関の転がり抵抗値だけでは見えにくい部分だと思います。
しなやかなタイヤと空気圧の関係
タイヤのしなやかさは、空気圧設定にも関係してきます。
基本的には、同じ条件であれば空気圧を高めにしたほうが、タイヤの変形は少なくなります。
タイヤは路面に接地するたびにわずかに潰れ、元の形に戻ります。
このとき、変形したタイヤが元に戻る過程で一部のエネルギーが熱などに変わって失われます。
これが変形損失、いわゆるヒステリシスロスです。
空気圧を高めにするとタイヤの変形量が少なくなるため、この変形損失は少なくなり、基本的には転がり抵抗は下がりやすくなります。
つまり、転がり抵抗だけで考えれば、空気圧はある程度高めに保てたほうが有利になりやすいということです。
ただし、これは路面がきれいで、タイヤが跳ねずに転がってくれる場合の話です。
実際の道路には、細かな凹凸やひび割れ、段差があります。
硬めのタイヤで空気圧を高めにすると、路面の細かな荒れを受け流しきれず、タイヤやバイクが跳ねやすくなることがあります。
その結果、接地感が薄くなったり、身体が暴れたり、ペダリングが乱れたりします。
この状態では、数値上の転がり抵抗が低くても、実走では速く走りにくくなる場合があります。
そこで、硬めのタイヤでは乗り心地や路面追従性を出すために、空気圧を下げたくなります。
もちろん、空気圧を下げることでタイヤは路面に追従しやすくなります。
ただし、下げすぎればタイヤの変形量は増えます。
タイヤの変形量が増えれば、変形損失も増えやすくなります。
つまり、転がりの軽さや反応の良さを失ってしまう場合があります。
ここで重要になるのが、タイヤそのもののしなやかさです。
タイヤ自体がしなやかであれば、必要以上に空気圧を下げなくても、路面の細かな凹凸に追従しやすくなります。
つまり、転がり抵抗面で不利になりにくい空気圧を保ちながら、乗り心地や接地感、安定感を確保しやすくなります。
この点が、しなやかなタイヤの大きな強みだと感じました。
タイヤそのもののコンプライアンスが高いということは、単に快適というだけではありません。
速く走るための空気圧を保ちやすくしてくれる要素でもあると思います。
実際に使用したハイエンドレースタイヤです。
転がりの軽さだけでなく、タイヤ全体のしなやかさも印象的でした。

コーナリング・ブレーキング時の差
また、しなやかなタイヤのメリットは、荒れた路面での乗り心地の良さだけではありません。
コーナリングやブレーキングでも差が出ます。
タイヤが硬く、路面の細かな凹凸で跳ねやすいと、コーナー中に接地感が薄くなる場面があります。
その場合、どうしても早めに必要以上にでも減速する必要が出てきて、コーナリング中の速度自体が低くなりやすくなります。
逆に、タイヤがしなやかに動いてくれると、コーナリング中でも車体が安定します。
この安定感はコーナー進入時、旋回中、立ち上がりでの安心感が変わります。
特に荒れた路面や下りのコーナーでは、タイヤが落ち着いていることは非常に大切です。
結果として、必要以上に減速しなくてもよくなり、コーナリングスピードを維持しやすくなります。
立ち上がりでもスムーズに速度を乗せやすくなります。
これは、単純な直線の速さとは違う部分です。
しかし、実走ではとても重要です。
ロードバイクのタイムは、大きな一発だけで決まるわけではありません。
小さな差の積み重ねで決まります。
ひとつのコーナーでも、できるだけ速度を落とさずに走れること。
荒れた路面で少し脚を止めずに済むこと。
ブレーキングで余計に減速しすぎないこと。
身体が暴れず、疲労を減らし、後半まで余裕を残せること。
こういった細かい要素が積み重なることで、最終的な速さにつながっていきます。
ハイエンドタイヤのデメリット
ここまで書くと、決戦用に近いハイエンドタイヤが万能のように見えるかもしれません。
しかし、もちろんデメリットもあります。
まず、価格が高めです。
高い走行性能を持つタイヤほど、どうしても価格は上がりやすくなります。
また、その高い走行性能と引き換えに、いわゆる“おいしい時期”が短いと感じることもあります。
新品に近い状態では非常に軽く、しなやかで、路面への追従性も良い。
しかし、摩耗が進むにつれ、その良さが少しずつ薄れていく場合があります。
摩耗の早さも、決戦用タイヤでは気になる部分です。
耐久性を重視したのタイヤと比べれば、トレッドの減りは早い傾向があります。
さらに、サイドカットのリスクも高めになる場合があります。
もちろん、これは走る路面や使い方にも大きく左右されますが、軽さやしなやかさを重視したタイヤでは、耐久性重視のタイヤほど気楽に使えるわけではありません。
一方で、耐パンク性能については、セカンドグレードのレースタイヤと比較しても、極端に大きな差があるとは限らないと感じています。
もちろん、製品ごとの構造や対パンクベルトの有無によって差はあります。
ただ、ハイエンドタイヤだからといって、すぐにパンクするというわけでもありません。
問題になりやすいのは、日常使用での摩耗の早さや、サイドカットなどの外傷リスク、そして価格とのバランスです。
ただし、だからといって高性能なタイヤを「もったいないから使わない」という考え方が正しいとも思っていません。
タイヤは、ロードバイクが路面と接している唯一の部分です。
いざというときに曲がれるか。
止まれるか。
荒れた路面で跳ねずに安定して走れるか。
こういった部分は、最終的にはタイヤの性能に大きく左右されます。
もちろん、どんなタイヤでも限界を超えれば滑りますし、絶対に転ばないタイヤはありません。
それでも、グリップ、路面追従性、ブレーキング時の安定感に優れたタイヤを使うことは、安全面でも非常に大きな意味があります。
そのため、私はタイヤに関してはあまりケチらないほうが良いと考えています。
高性能なタイヤを、性能が落ちきる前に早めのスパンで交換する。
これは単なる贅沢ではなく、ロードバイクを安全に、そして気持ちよく走らせるための重要な対策だと思います。
決戦用に近いハイエンドタイヤは、確かに価格が高く、摩耗も早い傾向があります。
しかし、そのぶん得られる走行性能、安心感、そして安全面での余裕は大きいです。
タイヤは速さだけではなく、安全にも直結する部品です。
まとめ
ロードバイクのタイヤ性能は、転がり抵抗だけでは決まりません。
もちろん、転がり抵抗は非常に重要です。
速いタイヤは、やはり速いです。
現在では、多少重量が増えたとしても、転がり抵抗の低いタイヤを選んだほうが、結果的に速く走れる場面も多いと思います。
しかし、実走での速さを考えると、それだけでは不十分です。
今回、耐久性を重視した少し硬めのタイヤから、決戦用に近いハイエンドレースタイヤへ交換して、改めてその違いを強く感じました。
同じ空気圧でも、タイヤがしなやかに動き、路面追従性や安定感を確保しやすいことは、速さに直結する要素だと感じました。
ハイエンドタイヤが速い理由は、単に転がり抵抗が低いからだけではありません。
タイヤそのものの動き方、路面との接し方、そして身体への負担の少なさも、実走での速さに大きく関係してきます。
ただし、すべての人に同じタイヤ、同じ空気圧が合うわけではありません。
走る路面、体重、バイク、ホイール、乗り方、好みのフィーリングによって、適切なタイヤや空気圧は変わります。
だからこそ、タイヤ選びでは数値上の性能だけではなく、ご自身の乗り方やクセ、好みに合っているかも大切です。
そして、タイヤを交換したら空気圧もいろいろと試してみることをおすすめします。
同じタイヤでも、空気圧が少し変わるだけで、転がりの軽さ、乗り心地、コーナリング時の安心感は大きく変わります。
最終的には、数値上の性能だけではなく、自分の走る路面、乗り方、バイクとの相性まで含めて、適切なタイヤと空気圧を見つけることが大切だと思います。


