ロードバイク用のカーボンホイールは、ここ数年でかなり選択肢が増えました。
特に中華系ホイールブランドの進化は、目を見張るものがあります。
以前であれば、軽量なディープリムホイールやカーボンスポークホイールは、かなり限られたブランドの高価格帯モデルが中心でした。
しかし最近では、いわゆる中華系ブランドからも、軽量でリムハイトが高く、カーボンスポークを採用したホイールが多く出てきています。
重量、リムハイト、リム幅、スポーク素材、価格。
スペックだけを見ると、かなり魅力的なモデルも少なくありません。
ただし、はっきり言ってホイールはスペックだけでは判断しにくいパーツです。
軽いからといって、必ずよく進むわけではありません。
リムハイトが高いから必ず巡航が伸びるわけでもありません。
また、カーボンスポークだから必ず反応が良く、高剛性で、速いとも限りません。
ホイールは実際に走ってみないと分からない部分が多く、カタログ上の数値だけでは見えてこない性能差があります。
特に、安定感、踏んだときのまとまり、速度の乗り方、乗り心地、フロントの落ち着きなどは、スペック表だけでは判断しにくい部分です。
本記事は、メーカーのサポートや提供を受けて作成した記事ではありません。
弊店のお客様から、「このホイールが実際にどういうものなのか、乗ったうえで教えてほしい」という、とてもありがたいご希望をいただき、実際に使用させていただいたものです。
今回は、Nepest NOVAの前後55mmホイールを実走で試してみました。
今回使用したホイールとタイヤ構成
今回使用したNepest NOVAは、前後55mmハイトのモデルです。
重量はカタログ値で前後で約1310g(±30g)です。
前後55mmというリムハイトを考えると、かなり軽量なホイールだと思います。
また、カーボンスポークを採用していることもあり、見た目やスペック上の印象はかなり現代的です。
タイヤは、Panaracer AGILEST FAST 28c クリンチャー、チューブは軽量なTPUチューブです。
私が普段使用しているホイールは、Lún HYPER LIGHT D45 1250g(F:46mm / R:54mm前後)です。
こちらはフロントにGoodyear Eagle SSR 28c TLR、リアにMICHELIN Power Cup 30c TLRを使用しており、前後ともチューブレス構成です。
そのため、今回のNOVAと普段使用しているホイールでは、ホイールだけでなくタイヤ構成も異なります。
この点は、乗り心地や接地感、走行感にも影響していると思います。
特にNOVAは、AGILEST FAST 28cとTPUチューブの組み合わせなので、ホイール単体ではHYPER LIGHTより重くても、タイヤ周りを含めた外周重量は軽くなっている可能性があります。
このあたりも踏まえたうえで、実走で感じたことを整理していきます。
良いと感じたところ
重さに関して
NOVAの良い点として、まず分かりやすいのは重量です。
前後55mmハイトで約1310gという重量は、かなり優秀だと思います。
リムハイトが高いホイールはどうしても重量が増えやすい傾向がありますが、NOVAはその点でかなり軽く仕上がっています。
実際に走ってみても、上りで明確に重いとは感じませんでした。
55mmハイトでも、この上りの感じはかなり良いです。
ダンシングで大きくもたつく感じもなく、登坂でホイールの重さが気になる場面は少なかったです。
もちろん、今回使用したPanaracer AGILEST FAST 28cとTPUチューブの軽さも影響していると思います。
ホイール単体では約1310gですが、タイヤ周りまで含めると外周重量はかなり軽い構成です。
そのため、上りで重さを感じにくかったのは自然だと思います。
軽量ローハイトホイールのような軽快さとは違いますが、ディープリムだから登れないという印象はありません。
ヒルクライム専用ホイールというより、平坦から上りまで広く使える軽量ディープリムホイールとして見ると、スペック上の魅力は十分あります。
剛性感に関して
NOVAに採用されているVONOAカーボンスポークは、かなりしなやかなモデルを使用しているようです。
そのため、NOVAは強く踏んだときにどのような反応をするのか、個人的にも楽しみなところがありました。
実際に走ってみると、高負荷の瞬間に関しては、他のカーボンスポークホイールと比べて極端に大きな違いがあるようには感じませんでした。
もちろん、ホイールが大きく負けるような感覚もありません。
スプリント気味に1000W前後までかけても、力が逃げるような、分かりやすい弱さは感じませんでした。
少なくとも、私の体重60kgちょっとに対して1000W程度であれば、駆動剛性が明らかに不足しているホイールという印象ではありません。
またスプリントとまではいかなくとも、強く踏んだときに、ホイールの剛性感に頼りなさを感じることもありませんでした。
この点は、カーボンスポークホイールらしいメリットが出ている部分だと思います。

乗り心地に関して
最初に乗ったとき、NOVAは少しソフトで穏やかな乗り心地にも感じました。
硬く跳ねるというより、走行感そのものは穏やかです。
カチカチに張りつめたようなホイールというより、少ししなやかさを残しているような印象がありました。
同社のMAUIとの棲み分けも、ある程度うまくできているように思えます。
ただ、この「ソフトに感じる」という部分は少し注意が必要です。
路面からの衝撃そのものがきれいに消えているというより、走りの反応や速度感が少し穏やかに感じるため、ソフトに感じた可能性もあります。
このあたりは良い面でもあり、後述する気になった点にもつながります。
イマイチだと感じたところ
スピード感と実際の速度
NOVAは軽く、剛性の不足感もありませんでした。
ただ、実際の走行感としてはマイルドな踏み心地もあり、速さがはっきり伝わってくるタイプではありませんでした。
最初は、振動がうまく丸められていることで、実際のスピードよりも身体で感じるスピード感が薄くなっているのかもしれないとも考えました。
しかし、実際にスピードを確認してみると、体感以上にスピードが乗りやすいという数値ではありませんでした。
リムハイトと重量を考えると、加速時にパワーをかけた際の反応にも期待したくなります。
実際、高出力をかけたときにホイールが大きく負けるような弱さは感じませんでした。
ただ、剛性不足を感じない一方で、踏み込んだ瞬間にスパッと速度が立ち上がる感じや、巡航で自然に伸びていく感じはやや薄い印象でした。
強く踏めるホイールではあります。
しかし、その入力が分かりやすいスピード感として返ってくるタイプではなく、踏み味は全体的にマイルドです。
そのため、NOVAは「弱いホイール」というより、速度の立ち上がりや伸びが少し分かりにくいホイールという印象でした。
この感覚は、カーボンスポークホイールとしては少し珍しいものだと思いました。
一般的にカーボンスポークホイールは、剛性感が高く、リニアな加速感を持っているものが多い印象があります。
一瞬のキレや、40km/hを超えてからの鋭い伸びを期待するレーサー目線からすると、加速の輪郭が少し曖昧に感じられる部分かもしれません。
ホイールの狙いとして、しなやかさや穏やかな踏み心地を重視した結果なのかもしれませんが、そのぶん、速度が明確に乗っていく感覚は少し分かりにくく感じました。
フロントの安定感

今回、個人的にもっとも気になったのはフロントの安定感です。
今回のNOVAは、前後ともに55mmハイトです。
リムハイトの影響もあってか、高速域を一定ペースで巡航しているときのフィーリング自体は悪くありません。
ただし、ハンドル操作が入る場面では、フロントの反応や動きに気になる部分がありました。
強めのブレーキング。
高速域でのコーナリング。
スプリント時にバイクを振ったときの挙動。
こういった場面で、フロントがビシッと落ち着いてくれる感じが少し薄く感じました。
シンプルに言えば、ハンドリングフィールが軽すぎる印象です。
良く言えば軽快なハンドリングですが、悪く言えばフロントの安定感がやや低く、不安定さにつながっているように感じました。
これまで使用してきたリムハイト50mm前後以上のホイールでは、同じようなフロントの不安定感を特に感じたことはほぼありませんでした。
また、AGILEST FASTのクリンチャーを使った場合でも、ここまで気になることはありませんでした。
過去には、もっと極端に巻き込み傾向が強いホイールに乗ったこともあります。
それと比べると、NOVAの挙動はそこまでクセが強いわけではありません。
ただ、それでもフロントの落ち着かなさは、慣れが必要だと感じるレベルでした。
スプリント時に顕著
このフロントのクセは、スプリント時にも影響します。
NOVAは高出力をかけても、ホイール自体が弱いとは感じませんでした。
しかし、スプリント時の安心感という意味では少し気になる部分がありました。
バイクを左右に振ったときに、フロントがピタッと落ち着いてくれる感じが少なく、軽くフラつくような印象があります。
そのため、振り切ったようなスプリントや、全力で踏み切る場面では少し気を使います。
もちろん、スプリントができないほど不安定というわけではありません。
ただ、前輪を完全に信頼して身体ごと預けられる感覚はやや薄く、最後まで安心して踏み抜くには少し慣れが必要だと感じました。
スプリントでは、リアの剛性や粘りだけでなく、前輪を信頼できるかどうかもかなり重要だと考えています。
ここは、個人的には大きめの気になる点でした。
この感覚は、単純な剛性不足というより、フロントホイールとしてのまとまりやステアリングフィールの違いに近いと思います。
おそらく慣れの部分もあるかもしれませんが、少なくともオンザレールのように、何も気にせずビシッと走れるホイールではありませんでした。
乗り心地に関して
NOVAは、前述のように最初の印象ではソフトな乗り味にも感じました。
細かい振動の吸収性は悪くないのだと思います。
ただ、路面からの衝撃に関しては、意外としっかり伝わってきます。
今回の構成はAGILEST FAST 28cにTPUチューブです。
そのため、チューブレス構成と比べると、路面からの入力が硬く感じやすい面はあると思います。
この点を考えると、衝撃の硬さをすべてホイールだけの影響とは言い切れません。
ただし、タイヤの違いや空気圧の影響を考えても、路面からの突き上げは少し気になりました。
乗り味全体は穏やかに感じる一方で、細かい衝撃や硬さはしっかり来る印象です。
そのため、NOVAの乗り心地は「衝撃吸収性が高い」というより、走行感が少しマイルドなホイールという表現のほうが近いかもしれません。
乗り心地に関しては、現在はワイドなタイヤも増えており、タイヤや空気圧である程度調整しやすくなっています。
そのため、今回の印象だけでホイール単体の快適性を断定するのは難しいところです。
ただ、少なくとも今回の構成では、マイルドな踏み心地とは別に、路面からの硬さは残るホイールだと感じました。
まとめ
私自身、これまで様々なホイールに乗り、整備でも多くのホイールを見てきています。
その中で、ホイール選びにおいて重要だと感じているのは、まず安定して走れること。そして、基本的な走行性能の部分で大きなマイナスがないことです。
ものすごく速いと感じるホイールでなくても、普通に安心して使えることはとても大切です。
前モデルのMAUIをメインで使用していた時期もありましたが、その理由は、少々硬いホイールではあったものの、硬さ以外に明確なマイナス点が少なかったからです。
低強度でも高強度でも、まっすぐ走りやすいこと。
強めのブレーキングや高速域のコーナリングでも、不安が出にくいこと。
スプリントやアタックのような動きでも、ホイールを信頼して踏めること。
こうした基本性能の部分にこそ、ホイールとしての価値が出ると考えています。
特に中華系カーボンホイールは、スペックが良くても、実走で気になるクセが出ることがあります。
そのクセが小さく、走行中に気にならない範囲であれば問題ありません。
しかし、フロントの不安定感や、踏んだときのまとまりの薄さがあると、スペックが良くても使いにくさにつながります。
また個人的には、55mmというリムハイトということもあって、高速域での伸びや巡航時の安定感に期待していたところです。
もちろん、リムハイトごとのラインナップを用意する以上、軽さ、空力、見た目、用途の幅など、さまざまな要素をバランスさせる必要があります。
しかし今回の実走では、軽さや穏やかな踏み心地は感じた一方で、55mmというリムハイトから期待する高速域での伸びはやや薄く感じました。
また、本来であればディープリムの安定感を活かしたい高速コーナーや強めのブレーキング時にも、前輪を安心して預けきれる感覚は少し物足りませんでした。
そのため、もしこのNOVAのしなやかさや軽さを活かすのであれば、55mmよりももう少し低いリムハイトのほうが分かりやすく活きるのではないかと感じました。
ただ、このあたりはメーカーとしても難しいところだと思います。
現在は、重量やリムハイト、スポーク素材といった分かりやすいスペックが、以前よりも簡単に比較される時代です。
その中で、製品として見たときに、分かりやすい数値上の魅力を落としにくい面もあるのだと思います。
NOVAは、高剛性すぎず、軽量性やしなやかさを活かした軽量ディープリムホイールを目指している印象があります。
ただ、今回の実走感では、軽さ、しなやかさ、巡航性能、フロントの安定感のバランスに、少し難しさを感じる部分もありました。
弊店では、このようにスペック上では見えにくい部分も含めて、お客様にご案内することを大切にしております。
ホイール選びは、買ってから不具合や違和感が出たときだけお店に相談するものではなく、購入前に相談できることにも大きな意味があると考えています。
そうした相談ができる場所であることに、実店舗としての価値があると思います。


