今の時期は、まさに梅雨真っ盛りです。
天気予報を見て雨の予報ならまだしも、降らない予報だと思って走りに出たら、しっかり雨、というのも先日の私自身の話でした。
本当にこの時期の天気は、なかなか思い通りにはいきません。
ロードバイクに乗っていると、完全に雨を避けるのは意外と難しいです。
もちろん、最初から大雨の予報であれば乗らないという選択もできます。しかし、走っている途中で降られてしまった場合はどうにもなりません。帰るしかありません。
そして帰宅後、びしょびしょになったロードバイクを見て思うわけです。
「さて、これをどこまでやればいいんだろうか」と。
雨の日に走った後のメンテナンスは、意外と悩むところです。
とりあえず水分を拭けばいいのか。チェーンに注油すればいいのか。それとも洗車までしたほうがいいのか。
今回は、雨の日にロードバイクで走った後、どこまでメンテナンスをすればいいのか、というお話です。

雨ライド後の汚れ方
雨の中を走った後のロードバイクは、当然しっかり濡れています。
もちろん、水分はロードバイクにとって基本的にあまり好ましい存在ではありません。金属部分に水分が付着したまま放置すれば、錆や腐食につながることもあります。
ただし、雨天走行後に問題になるのは、濡れていることだけではありません。
雨の日のロードバイクは、上から降ってくる雨だけで濡れるわけではありません。実際には、路面から跳ね上がってくる水をかなり浴びながら走っています。
そして、この路面からの跳ね上げ水が厄介です。
路面の水には、砂、泥、ガラス片などの細かな異物や汚れが含まれています。簡単に言えば、ロードバイクはジャリジャリとした水を浴びながら走っているようなものです。
つまり、見た目にはただ濡れているだけに見えても、実際にはフレーム、ドライブトレイン、ブレーキ周りなどに、細かい砂や粒子状の汚れが付着しています。
逆に、雨は中途半端に降るよりも、しっかり降ってしまったほうが、この路面からのジャリジャリをある程度流してくれる場合もあります。
そのため、完全な土砂降りの後よりも、雨上がりのウエット路面や小雨程度の方が、細かい砂や汚れを多く巻き上げていることもあります。
そしてこれをそのまま放置して乾いてくると、「え、こんなに汚れていたのか」と思うことも少なくありません。

この汚れを放置すると、金属部分の錆や腐食を呼ぶだけでなく、ドライブトレインではヤスリのように働き、摩耗を必要以上に進めてしまうことがあります。
理想は洗車
雨の日に走った後は、できれば洗車をおすすめします。
「ロードバイクに水をかけるのは良くないのでは?」
「すでにびしょびしょなのに、さらに洗車するの?」
そう思う方もいるかもしれません。
たしかに、水はロードバイクにとって積極的に歓迎したいものではありません。内部に水が入ってほしくない場所もありますし、濡れたまま放置すれば錆や腐食につながる部分もあります。
ただ、雨の中を走った時点で、車体はすでにしっかり濡れています。
ここで水を使うことだけを怖がって、砂や泥、汚れたオイルを残したままにしてしまうと、そちらの方が悪影響が大きくなる場合があります。
雨天走行後の洗車は、水をかけることが目的ではありません。
目的は、路面から巻き上げた砂や泥を落とすこと。ドライブトレインに入り込んだ汚れや劣化したオイルを落とすこと。そして最後に、水分をできるだけ残さず、必要なところにきちんと注油することです。
もちろん、きちんと組まれているバイクであれば、雨のたびに毎回分解が必要になるわけではありません。雨のたびに分解清掃をしていたら、さすがに大変です。
雨天走行後に洗車をおすすめする理由は、水分を取るだけでは落としきれない、路面から巻き上げたジャリジャリした汚れを落としたいからです。
雨の後のロードバイクは、想像以上に汚れています。
だからこそ、できれば洗車をした方が良い、ということです。
とはいえ、すべての方が自宅で水を使って洗車できるわけではありません。
そこで今回は、洗車ができる場合と、洗車ができない場合に分けて、雨天走行後のメンテナンスを考えてみます。
洗車ができる場合
洗車ができる環境であれば、雨天走行後はできるだけ早めに洗ってしまうのが理想です。
雨水そのものももちろん良くありませんが、問題は水分だけではありません。雨天走行後の車体には、路面から巻き上げた砂や泥、汚れたオイルが付着しています。これらを放置すると、錆や腐食だけではなく、駆動系やフレーム表面へのダメージにつながることがあります。
ドライブトレイン
雨の後に一番気を使いたいのは、やはりドライブトレインです。
チェーン、スプロケット、チェーンリング、プーリー周りには、雨で劣化したオイルと一緒に、砂や泥の粒子が入り込みやすくなります。
ドライブトレインの天敵は、水分による錆だけではありません。
オイルに巻き込まれた砂や泥の粒子は、研磨剤のような状態になり、チェーンやギア周りを攻撃します。そのまま走行を重ねることで、チェーン、スプロケット、チェーンリング、プーリーなどの摩耗を促進してしまいます。
チェーン内部に入り込んだ砂や泥、劣化したオイルは、外から軽く拭いただけでは落としきれません。できればディグリーザー(チェーンクリーナー)を使用し、チェーン、スプロケット、プーリー周りの汚れを落としていきます。特にチェーン内部に入り込んだ汚れは、ブラッシングをしながら追い出してあげる必要があります。
ディグリーザーで汚れを浮かせ、ブラッシングで内部の汚れを追い出し、きれいな水で流す。その後、しっかり水分を抜いてから注油する。ここまでできれば理想的です。
また、洗浄と同じくらい大切なのが注油です。
洗浄後は、チェーン表面だけでなく内部の油膜も落ちています。表面に少しだけオイルを垂らして終わりにするのではなく、チェーン内部まできちんと潤滑が入るように注油し、少し回してなじませます。
その後、余分なオイルは拭き取ります。
オイルをたくさん付ければ良いという話ではありません。余分なオイルが残りすぎると、またそこに砂や汚れを抱き込んだり、走行中に飛び散って別の場所を汚したりすることがあります。
必要なところにはしっかり入れる。余ったものは拭き取る。
ドライブトレインのメンテナンスは、この地味な作業が大切です。

フレーム
ドライブトレインと同じくらい気を付けたいのが、フレーム表面に付いた砂や泥です。
雨の日に走った後のフレームは、ただ濡れているだけではありません。水とともにタイヤが巻き上げた砂や泥が、フレーム表面に付着しています。
特に雨上がりや軽いウエット路面では、細かい砂を拾いやすくなります。
見た目にはそこまで汚れていないように見えても、触ってみるとざらつきがあることがあります。このざらつきが付いた状態で、乾いた硬いウエスを使って拭いてしまうと、その砂が研磨剤のようになり、フレーム表面に細かな傷を付けてしまうことがあります。
ですので、砂や泥が付いた状態で、いきなりウエスだけで拭き取るのはあまりおすすめしません。
まずは水で大まかな砂や泥を流し、その後に中性洗剤の泡で全体を洗う。これが基本です。
水をかける際にも、ベアリングやシール部分を狙い撃ちするような洗い方は避けた方が良いです。ヘッド、BB、ハブ、ブレーキ周りなどに強い水圧をかけると、かえって内部に水を押し込んでしまう可能性があります。
普通の水圧で砂や泥を流し、中性洗剤で汚れを落とし、洗った後は水分をできるだけ残さない。
これが大切です。
また、カーボンフレームの場合、フレーム本体がアルミやスチールのように赤錆になることはありません。カーボン自体は錆びないからです。
ただし、だからといって水分や汚れを放置してよいわけではありません。
特に注意したいのが、マット塗装です。
マット塗装のフレームは、水分や汚れを拭き残したままにすると、強力な水垢のような跡が残ることがあります。これがなかなか厄介で、あとから簡単に落とせるものではありません。
特に汚れが残りやすいのは、クランク周り、リアエンドの内側、チェーンステー周辺です。こういった場所は走行中に水や汚れを巻き上げやすく、洗車後も拭き残しが出やすい場所です。
これは雨の日の後だけではなく、洗車後も同じです。洗った後は、拭き残しがないように注意が必要です。
また、マット塗装はこすりすぎることで艶が出てしまう場合もあります。汚れを落としたい気持ちはわかりますが、強くこすりすぎないように注意が必要です。
そしてきれいになったあとは、バリアスコートなどのコーティング剤を塗布しておくと、汚れが付きづらくなり、今後のメンテナンスが楽になります。
ただし、ブレーキローター、ブレーキパッド、タイヤの接地面などには付着しないように注意が必要です。
ブレーキ周り
雨の後は、ディスクブレーキ周りも確認しておきたい部分です。
洗車時でも、ローターやパッド、ブレーキ周辺には油分を付けないように注意します。
雨天走行後のブレーキ周りの汚れは、主にブレーキダストや、路面から巻き上げた砂、泥汚れです。このあたりの汚れは、基本的には中性洗剤で落とせます。
逆に、ブレーキローターやパッド周辺にディグリーザーやオイル成分を含むケミカルを使うのは厳禁です。ドライブトレイン用の洗浄剤や油分を含むケミカルがローターやパッドに付着すると、制動力の低下や音鳴りにつながることがあります。
ローターは濡れたまま放置すると、錆が浮くことがあります。走ればある程度削れる場合もありますが、濡れている場合は、油分の付いていないクリーンな布で水分を拭き取っておいた方が安心です。
チェーンオイルを触った手でローターを触る。油分の付いたウエスでローターを拭くのは、やめた方が良いです。
ロードバイクのディスクブレーキは、油分に弱いです。制動力の低下や音鳴りにつながることがあります。
また、キャリパー周りは意外と水分が残りやすい場所です。布で拭けるところは拭き取りますが、細かな隙間に残った水分まではなかなか取れません。拭ききれない水分がキャリパー周辺に残ると、腐食や固着につながる場合があります。
コンプレッサーがある場合は、エアーで水分を飛ばすのがおすすめです。コンプレッサーがない場合でも、フロアポンプである程度は代用できます。
もちろん完全に同じとはいきませんが、何もしないよりはかなり良いです。
雨の日に走った後は、ドライブトレインやフレームだけでなく、ブレーキ周りの水分もできるだけ残さないようにしたいところです。

洗車ができない場合
とはいえ、すべての方が自宅で水を使って洗車できるわけではありません。
マンション住まいだったり、洗車スペースがなかったり、時間がなかったり。ロードバイクは好きでも、洗車環境まで完璧という方は意外と少ないと思います。
その場合でも、できる範囲でメンテナンスをしたほうが良いです。
ドライブトレイン
洗車ができない場合でも、まずはチェーンやスプロケット周りに付いた汚れたオイルを、できるだけ取っておきたいところです。
水が使えない場合は、WAKO’Sの水なし洗車のような方法もあります。
ディグリーザーで汚れを浮かせ、水で流す代わりにフォーミングマルチクリーナーなどを使って、汚れやケミカルをできるだけ浮かせて拭き取る方法です。詳しい手順はYouTubeなどで「WAKO’S 水なし洗車」と検索すると、かなり多く出てきます。
水を使った洗車とまったく同じというわけではありませんが、水が使えない環境ではかなり有効な方法です。
水なし洗車も難しい場合は、柔らかめのオイルを少し多めに塗布し、チェーンになじませてから拭き取る方法もあります。
汚れた油をきれいな油と混ぜ、拭き取ることで、汚れを少しでも減らすイメージです。
これを数回繰り返すことで、チェーン内部の汚れをある程度少なくできます。完全な洗浄と同じではありませんが、砂を含んだ汚れたオイルをそのまま残すよりはずっと良いです。
最低でも、表面を拭き取り、オイルを塗布する。
これは必須です。
雨の後は「とりあえず表面だけ拭いたから大丈夫」と思いがちですが、ドライブトレインに関しては、そこからの注油が重要です。
水分を含んだ汚れた油を拭き取り、あらためて潤滑を入れてあげる。これだけでも、その後の状態はかなり変わります。
フレーム
水を使って洗車できない場合でも、フレーム表面の砂や泥はできるだけ落としておきたいところです。
ただし、ここでもいきなり乾いたウエスでゴシゴシ拭くのは避けたいです。
砂が付いたまま強くこすると、フレーム表面に細かな傷が入ることがあります。
できればフォーミングマルチクリーナーなどのフォーム状のケミカルを使い、できるだけ汚れを浮かせてから、柔らかい布で優しく拭いていきます。
このとき、同じ面で何度もこすり続けるのはあまり良くありません。布に砂が付いた状態でこすり続ければ、結局その布がヤスリのようになってしまいます。
布の面を変えながら、強くこすらず、砂を引きずらないように拭く。
こういったことを意識するだけでも、フレームへのダメージは減らせます。
マット塗装の場合は、洗車できない日でも拭き残しに注意が必要です。
特にクランク周り、BB周辺、リアエンドの内側、チェーンステー周辺は汚れが残りやすい部分です。水分や汚れを残したままにすると、後から落としづらい水垢のような跡になることがあります。
マット塗装は強くこすりすぎると艶が出てしまう場合もあるため、汚れを落としたい気持ちはありつつも、優しく丁寧に作業したいところです。
ブレーキ周り
洗車ができない場合でも、ブレーキ周りの水分はできるだけ取っておきたいところです。
ディスクローターは、油分の付いていないクリーンな布で水分を拭き取ります。
キャリパー周りは、柔らかい布で届く範囲だけでも水分を取ります。可能であれば、フロアポンプなどを使って、細かな隙間に残った水分を飛ばしておくと安心です。
ブレーキ周りは、効きに関わる部分です。
見た目の汚れだけではなく、水分、油分、音鳴り、引きずりなども含めて、少し気にしておきたいところです。
慣れている方であれば、パッドを外して軽く状態を確認しておくのも良いと思います。水分や汚れが残っていないか、異物を噛んでいないか、片減りや偏摩耗がないかを見ておくと安心です。
ただし、パッドを外す作業に不安がある場合は、無理に触らない方が良いです。ブレーキ周りは安全に直結する部分なので、不安がある場合はショップで確認してもらうのがおすすめです。
最近のロードバイクは、水に強いとは言い切れない
最近のロードバイクは、ケーブルが内装され、ハンドル周りもすっきりし、空力も考えられています。フル内装のバイクなどは、まさに現代ロードバイクという感じです。
ただし、整備目線で見ると、雨や水に対して気を使う部分も増えています。
特にヘッド周りやコラム周辺、ケーブルルーティング周辺は、水が入りやすかったり、入った水が抜けにくかったりする構造のものもあります。
もちろん、雨の日に一度走っただけで即終了、という話ではありません。
きちんと必要な場所にグリスを入れ、防錆や固着防止を意識して組まれていれば、1回や2回の雨でいきなり大きな問題が出ることは少ないです。
弊店 FF-Cycleで組み立てを行う際も、雨の日に少し走っただけで不具合が出るような組み方にならないよう、必要な箇所にはグリスや防錆を意識して作業しています。
ただ、組み付け時のグリスが少なかったり、シール周辺が乾いていたり、組み方が甘かったりすると、その場では問題がなくても、数か月後に不具合として出てくることがあります。
雨の日のトラブルは、走った直後にすぐ出るとは限りません。
しばらく経ってから、ヘッド周りから音が出たり、BB周りから異音がしたり、ボルトが固着したり、ベアリングにゴリ感が出たりすることがあります。
だからこそ、組み方は大切です。
ロードバイクは、ただパーツが付いていれば良いというものではありません。どこにグリスを入れるのか、どこを締めるのか、どこを守るのか。そういう地味な部分が、雨の日や数か月後に効いてきます。
自宅ではメンテナンスしきれない部分もある
雨の日に走った後のメンテナンスは、自宅でできることもあります。
今回ご紹介したように、チェーンをきれいにして注油する、フレームを洗う、水分を拭き取る、タイヤに異物がないか確認する、ローターを拭く。
このあたりは、できるだけやっておきたいところです。
ただし、自宅では対応しきれない部分もあります。たとえば、ホイールのリム内部に入った水です。走行後にホイールを動かすと、チャプチャプ音がしたり、バルブホール周辺から水が出てきたりすることがあります。
また、ドライブトレインのジャリジャリ感がどうしても抜けない場合や、BB周り、ヘッド周り、ハブベアリング、フル内装フレームのヘッド周辺などは、外から拭くだけでは対応できないことがあります。
ハンドルを切ったときに引っかかりがある、ホイールの回転が重い、ブレーキ周りの音や引きずりが気になる。こういった場合は、早めの点検がおすすめです。
違和感があるまま乗り続けると、ベアリング交換や固着修理など、作業が大きくなってしまうこともあります。小さな違和感のうちに確認しておく方が、結果的に軽く済むことも多いです。
まとめ
ロードバイクは、オールウェザースポーツと言われることもあり、基本的には雨の中でも走れるように作られています。
ですので、雨の日に一度走っただけで、すぐにロードバイクがダメになってしまうわけではありません。
ただし、雨天走行後の汚れを残したまま放置することは、決して良いことではありません。
洗車ができる環境であれば洗車をする。洗車が難しい場合でも、ドライブトレインの汚れをできるだけ落とし、必要なところへ注油をする。フレームやブレーキ周りの水分を拭き取り、タイヤの異物も確認しておく。
こういった細かなメンテナンスが、ロードバイクを長く良い状態で保つことにつながります。
また、オーナー様ご自身ではメンテナンスしづらい部分もあります。
雨の後にジャリジャリ感が抜けない、ホイールから水が出る、BBやヘッド周りに違和感がある。こういった場合は、早めの点検がおすすめです。
「まぁ大丈夫かな」と思っていたら、数か月後に想像以上のトラブルに発展することもあります。
必要以上に雨を恐れる必要はありません。
ただ、雨の日に走った後は、いつもより少しだけ丁寧にメンテナンスをしてあげる。
そして、自宅では対応しきれない部分は、定期的にお店で確認する。
これが、ロードバイクを長く良い状態で乗るためには大切だと思います。
今回記事内に出てきたケミカル類は下記の3点、日常メンテナンスにも役立つアイテムです。


