ロードバイクのトレーニングで、30秒インターバルというメニューがあります。
冬場の長いベースの積み上げを終えて、その土台の上に高強度の能力を乗せていく目的もありますし、私自身もレースに向けて、より実戦的な走りができるように取り入れている高強度メニューです。
この30秒インターバルですが、“30秒”という時間だけを見ると、かなり短く感じます。
SSTやFTP走のように、何十分も長く踏み続ける練習とは違い、短時間で一気に高い出力を出すメニューです。
そのため、30秒インターバルと聞くと、どうしても「とにかく全力で踏むもの」というイメージがあります。
30秒なら出し切る。
パワーが落ちても、とにかく最後まで踏む。
レストは短いほうがきついので、効果も高そうに感じる。
私自身もどちらかというと、そういうイメージを持っていました。
しかし、改めて30秒インターバルについて調べたり、実際のレースで使う場面に当てはめて考えたりしてみると、思っていたよりもかなり奥が深いことがわかりました。
30秒インターバルは、ただ全力で踏めばよいというものではなさそうです。
そして、レスト時間も単なる休憩ではありません。
レストをどのぐらい取るか、どのように入れるかによって、同じ30秒でも練習の意味が変わります。
今回は、ロードバイクにおける30秒インターバルについて、レスト時間と強度設定によって効果がどう変わるのか、私自身が気になって調べたことをまとめてみます。
30秒インターバルの強度
まず気になったのは、30秒インターバルといっても、すべてが同じ目的なのか、ということです。
30秒という時間だけを見ると、どうしても「短時間高出力」「短い時間を全力で踏むもの」と考えがちです。もちろん、30秒を本当に全力で踏むメニューもあります。
しかし一方で、あえて少し強度を抑えて、30秒間の出力をできるだけそろえるようなメニューもあります。
この2つは、同じ30秒インターバルでも、狙っている効果が少し違います。
まずは強度に関して考えてみます。
全力で出し切る30秒
ひとつ目は、30秒を本当に全力で踏むメニューです。
いわゆるオールアウトに近い30秒です。
この場合、最初の数秒からかなり高いパワーを出し、後半はパワーが落ちても、とにかく出せるものを出し切る形になります。
最初は大きなパワーが出ますが、後半になるほど脚が重くなり、出力は落ちていきます。
それでも最後まで踏み続けることで、短時間で非常に強い刺激を入れることができます。
この練習で狙うのは、最大出力に近い領域を使うことや、無酸素系のエネルギー供給能力に強い刺激を入れることです。
また、後半にパワーが落ちてきても、そこで踏むのをやめずに最後まで出し切ることで、強い疲労の中で踏み切る力も鍛えられます。
つまり、全力で行う30秒インターバルは、最大出力や無酸素系への強い刺激を狙うメニューです。
ただし、これはかなり強い練習です。
30秒だから軽いということはまったくありません。
本当に全力で30秒踏むと、脚へのダメージも大きく、次の1本でも同じような出力を出すためには、それなりに長いレストが必要になります。
狙った強度で制御する30秒
一方で、30秒を少し抑えて、最後まで大きく落とさずに踏む練習もあります。
たとえば、全力なら600W以上まで出せる人が、あえて500W前後で30秒そろえるような形です。
この場合、目的は全力で出し切ることではありません。
狙ったワットまでスムーズに上げ、最初に踏みすぎず、30秒の後半まで大きく落とさない。このように高出力をコントロールしながら、次の動きにつなげる余力を残すことが目的になります。
ロードレースでは、30秒全力で踏んで終わり、という場面ばかりではありません。
アタックに反応して30秒ほど踏んだあとも、そこで終わりではありません。集団が伸びたままになることもありますし、コーナーの立ち上がりで踏んだあと、そのまま前方で位置を保たなければならない場面もあります。
前へ上がるために一度高い出力を使ったとしても、そこで脚を止めてしまえば、すぐに位置を下げてしまいます。結局、そのあとも続けて高めの強度を維持しなければならないことは少なくありません。
こういう場面では、30秒で完全に出し切ってしまうと、その後が続かなくなります。
30秒だけ高いパワーを出すことと、そのあとも動き続けられることは、少し違います。
30秒で完全に出し切ってしまうと、その瞬間の数字は高くても、その後の踏み直しに対応できなくなることがあります。
レースでは、ゴール直前でなければ、30秒踏んだあとにも走りは続きます。
だから、あえて少し抑えて30秒をそろえる練習には、高出力を出すだけでなく、その後の展開につなげる意味があります。
これが、狙った強度で制御する30秒の目的です。
同じ30秒でも、狙っている効果が違う
このように、30秒インターバルには大きく分けて、全力で出し切る30秒と、狙った強度で制御する30秒があります。
全力で出し切る30秒は、最大出力や無酸素系への強い刺激を狙う練習です。
一方で、狙った強度で制御する30秒は、高出力をレースの中で使える形にする練習です。
どちらが正しいという話ではなく、狙っている効果が違うということです。
ですので、30秒インターバルを行うときは、まず「今日は全力で出し切る日なのか」「狙った強度でそろえる日なのか」を分けて考えたほうがよさそうです。
より実戦的な30秒
30秒インターバルの強度を考えていくと、もうひとつ大事なことがあります。
それは、レースで使う30秒は、必ずしも一定ペースの30秒ではないということです。
トレーニングとして30秒間をできるだけ一定のパワーでそろえることは、高出力をコントロールする練習としてとても意味があります。
一方で、実際のレースで相手を離したいアタックの場面では、30秒を最初から最後まで同じように踏むだけでは足りないことがあります。
特に平坦基調のロードレースやサーキットレースでは、中途半端に30秒ほど踏んでも、強い選手にはついてこられます。
本当に差を作りたいなら、まず最初の数秒から10秒ほどで鋭く加速し、相手の反応を一瞬遅らせる必要があります。
そこでわずかでも間が空けば、その後の20秒ほどで高い出力を維持し、できた差を広げる、もしくは確定させることができます。
ただし、アタックはそこで終わりではありません。その後も、捕まりにくいだけの高めの強度を維持できて、はじめて実戦で使える動きになります。
つまり、レースで使う高強度は、30秒を一定のパワーで踏んで終わりというより、最初に鋭く加速し、そこから高い出力で押し続け、最後は粘れる強度へ落として維持する形になりやすいです。
ただし、ここが難しいところです。
最初の10秒を全力で踏みすぎると、一瞬は大きなパワーが出ても、その後が続きません。そこから20秒、さらにその後も踏み続ける力が残らなくなります
逆に、後半を残しすぎると、最初の加速が足りません。相手に反応する時間を与えてしまい、アタックとしては決まりにくくなります。
レースで必要なのは、ただ最大値を出すことではなく、相手が反応しにくいだけの鋭さを出しながら、その後も走りを続けられる強度に収めることです。
ここが、単純な30秒全力走とは少し違うところです。
30秒だけ高いパワーを出せても、そのあと脚が止まってしまえば、レースでは使いにくい。逆に、30秒をきれいにそろえられても、最初の加速が弱ければ、相手を離すきっかけにはなりにくい。
だから、30秒インターバルをレース向けに考えるなら、一定出力の30秒だけではなく、鋭い加速から高出力維持へつなげる形も練習しておきたいところです。
たとえば、最初の10秒で鋭く加速し、次の20秒で高い出力を維持し、その後さらに粘る。
これは、30秒インターバルというより、実際のアタックを切り取った練習に近くなります。
30秒で終わる練習ではなく、30秒のあとに何をするのか。そこまで含めて考えると、30秒インターバルはより実戦的なメニューになると思います。
30秒インターバルのレスト時間
次に気になったのは、レスト時間です。
高強度インターバルでは、レストを短くすると一気にきつくなります。
30秒踏んで30秒休む。
30秒踏んで1分休む。
こういうメニューは、心拍も呼吸も落ち切らないまま次の1本が来ます。
やった感はかなり強いです。
後半は脚も苦しく、心肺もきつく、いかにもトレーニング効果が高そうに感じます。
私自身も、30秒インターバルはこのようにレストを短くして行うもの、という思い込みがありました。
しかし、ここで注意したいのは、レストを短くすると、練習の目的が変わるということでした。
レストを短くすれば、当然ながら次の1本で高い出力は出しにくくなります。まだ十分に回復していない状態で、次の30秒に入るからです。
つまり、レストの長さはただの休憩時間ではありません。
30秒の出力を毎本高く保ちたいのか。
それとも、疲労した状態で30秒を繰り返したいのか。
この違いによって、適切なレスト時間は変わってきます。
レストが短い30秒インターバル
まず、レストを短くする30秒インターバルです。
30秒オン、30秒オフ。
あるいは、30秒オン、1分オフ。
このような形のメニューです。
このタイプは、後半になるほどかなり苦しくなります。心拍は高いまま落ちにくく、呼吸も苦しい状態が続きます。脚も回復しきらないため、2本目、3本目と進むにつれて出力は落ちやすくなります。
ただし、これを失敗と見るかどうかは、目的によります。
短いレストで行う場合、毎本の最高出力をそろえることよりも、回復しきらない状態で踏み直すことに意味があります。
心拍が高いまま落ち切らず、呼吸も苦しい状態で次の30秒に入る。脚も完全には戻っていないので、後半になるほど出力は落ちやすくなります。
レースでは、完全に休める場面ばかりではありません。
コーナーが続けば、そのたびに立ち上がりで踏まされます。集団が伸びれば、位置を下げないために脚を使います。前で誰かがペースを上げて、ようやく落ち着いたと思ったら、また次の動きが来ることもあります。
こういう展開では、短い回復で何度も踏み直す能力が必要になります。
その意味で、短いレストの30秒インターバルは、レース中の反復耐性を作る練習として有効です。
ただし、このメニューをやっているときに「毎本パワーが落ちるからダメだ」と考えるのは少し違うと思います。
短いレストにすれば、パワーは落ちやすくなります。
その代わり、心拍は高く保たれ、疲労下で踏み直す刺激が入ります。
つまり、短いレストの30秒インターバルは、最大出力を磨くメニューというより、疲労下での反復力を鍛えるメニューと考えたほうが自然です。
レストが長い30秒インターバル
一方で、30秒の高い出力を毎本しっかり出したいなら、レストは長めに取ったほうがよい場合があります。
たとえば、30秒を高い出力で行い、4分から6分ほど休むような形です。
レストが長いので、メニューとしては少し楽に感じるかもしれません。
ただし、この場合の目的は、楽をすることではありません。しっかり回復することで、次の1本でも高い出力を出しやすくするためです。
狙ったワットにきちんと入り、毎本大きく崩れずに再現する。そうやって、高い出力を狙って出す感覚を身につけることが目的です。
たとえば、30秒を500Wでそろえたいとします。
1本目だけ500W出て、2本目が460W、3本目が430W、4本目が400Wまで落ちてしまうと、後半は最初に狙っていた練習とは少し変わってきます。
もちろん、それでも意味はあります。
ただし、それは30秒の高出力を再現する練習ではなく、疲労した状態で粘る練習になります。
30秒の出力そのものを高めたいなら、レストを長く取り、毎本できるだけ狙った出力を出せるようにする必要があります。
この練習は、アタックへの反応や短い登り返し、コーナーの立ち上がり、集団内で前へ上がるような場面に向いています。
一瞬で高い出力を出し、踏み始めで遅れず、必要な場面でしっかり反応できるようにする。そうした短時間高出力の質を高めたいなら、レストをしっかり取って、毎本の出力をそろえるほうが合っています。
この場合、レストは甘えではありません。次の1本の質を上げるための大切な時間です。
同じ30秒でも、レスト時間で効果は変わる
このように、30秒インターバルはレスト時間によって狙いが変わります。
レストを短くすれば、きつさは増します。
心拍も落ちにくく、疲労した状態で踏み直す練習になります。
一方で、レストを長く取れば、毎本の出力を高く保ちやすくなります。
30秒の高出力そのものを再現する練習になります。
どちらが正しいという話ではありません。
短いレストは、疲労下での反復耐性を作るため。
長いレストは、高出力の質を保つため。
同じ30秒インターバルでも、レスト時間が変われば、狙っている効果も変わります。
だから、30秒インターバルを行うときは、ただ「レストは短いほうがきついから効く」と考えるのではなく、今日の練習で何を狙うのかを先に決めたほうがよさそうです。
奥が深い30秒インターバル
ここまで30秒インターバルについてまとめてきましたが、今回あらためて調べてみて、本当に奥が深いメニューだと感じました。
SSTやテンポ走であれば、基本的には強度を大きく上下させず、一定の出力を保つことが重要になります。高すぎる強度に上げすぎず、狙った範囲の中で長く踏み続ける。そういう意味では、比較的イメージしやすい練習です。
一方で、30秒インターバルは少し違います。
30秒という短い時間の中で、どのぐらいの強度まで上げるのか。全力で出し切るのか、少し抑えて最後まで落とさないのか。そして、その後のレストをどのぐらい取るのか。
目的に応じて、パワーだけでなく、レスト時間までしっかり考える必要があります。
大事なのは、どれが一番正しいかではなく、その練習で何を狙っているのかだと思います。
30秒の最大出力を上げたいのか。狙った30秒を何本も再現したいのか。疲労した状態で踏み直したいのか。それとも、レースでアタックしたあとに粘る力を作りたいのか。
目的が変われば、正しいレスト時間も、正しい強度設定も変わります。
本当につくづく思いますが、練習はきつければ良い、しんどければ良い、というものではないということです。
もちろん、高強度インターバルなので楽な練習ではありません。苦しい時間も必要です。ただ、その苦しさが何につながっているのかを考えずに行うと、狙っていた効果とは違う練習になってしまうこともあります。
だからこそ、30秒インターバルは何となく全力でやるのではなく、目的に合わせて組み立てたほうがよさそうです。
今回調べてみて、30秒インターバルへの見方が少し変わりました。
高強度インターバルは、ただ苦しむための練習ではありません。レースの中で必要な高出力を、必要な場面で使えるようにするための練習です。
そのためには、踏む30秒だけでなく、休む時間も、踏み方も、きちんと考える必要がありそうです。

