過去最高の状態で臨んだ富士ヒル試走が、過去最悪の結果で終わった理由

富士スバルライン入口と富士山。富士ヒル試走での結果から弱点を分析する記事の画像です。 トレーニング
富士ヒルの入口とも言える富士スバルライン。ここで、自分の弱さを突きつけられました。

昨年の冬から春にかけて、トレーニング方法を一新し、インターバルトレーニングを取り入れ、かなり順調に積み上げてきました。

今期の特徴としては、SST、テンポ走、ロングライド。
いわゆる派手な練習ではありませんが、土台をしっかり作る練習をコツコツと続けてきました。

その結果、パワーそのものは明らかに伸びていました。

以前よりも高い出力で走れる。
SSTの質も上がっている。
テンポ走でも余裕が出てきている。

ベース構築の重要さを身を持って体感できるぐらいには成長を実感していました。

富士ヒルの試走へ行く前は、不安はなく今年一発目のタイムアタックでさぞかし良い結果がでるだろうと、楽観的に考えていました。なぜならパワーが上がっていたからです。

それでも簡単に走れるとは思っていません。
ただ、冬からしっかり積み上げてきた分、今年はそれなりに走れるはずだと思っていました。

しかし、実際に富士ヒルを走ってみると、その考えはかなり甘かったと感じました。

パワーは伸びていたが・・・

富士ヒルに向けて、自分なりに意識していたことがあります。

それは、できるだけ脚を止めずに踏み続ける練習です。

昨年の富士ヒルで強く感じたのは、富士ヒルは長いヒルクライムであり、レース中に休めるポイントがほぼないということでした。

平地のロードレースや普段の実走のように、コーナー、信号、下り、集団内の緩みなどで自然に脚を休められる場面が少ないです。

だから昨年の反省として、富士ヒル特有の「踏み続ける力」が足りなかったと考えていました。

そこで今年は、SSTを中心に、できるだけ脚を止めない環境を作って練習してきました。

アップダウンのあるコースで、22分走る。
Uターンして、また22分走る。
さらにまたUターンして、できるだけ止まらず、緩めず、脚も止めずに踏み続ける。

信号やUターンはどうしてもありますが、それ以外ではできる限り富士ヒルに近い形で、淡々とパワーを出し続ける練習をしていました。

自分の中では、これが富士ヒル対策だと思っていました。

これなら、昨年よりはかなり良く走れるはずだと思っていました。

しかし実際の結果は、過去最遅とも言えるほどのタイムでした。

過去最高の状態で臨んだ試走が、過去最悪の結果で終わりました。

つまり、それだけでは全く足りなかったということです。

はっきり言って、打ちのめされました。

自分は大きく見誤っていたのだと痛感しました。

富士ヒル試走で打ちのめされた

富士ヒルの試走結果は想定には遠く及ばず、正直かなりショックでした。

冬からしっかり積み上げてきた土台があり、数値を見てもパワーは確実に伸びています。
SSTもきちんとこなせていて、脚を止めない練習もしていました。

それなのに、富士ヒルでは思うように走れませんでした。

このときに考えたのは、平地で出せるパワーと、富士ヒルで使えるパワーは同じではないのではないか、ということです。

もちろん、パワーはパワーです。
数字としては同じワット数です。

しかし、同じ300Wでも、平地で出す300Wと、登りで出す300Wでは感覚が明らかに違います。

平地での290Wと、登りでの290W。
もちろん富士ヒルでは標高による酸素の薄さもありますが、それを差し引いても、明らかに心拍数は高く、主観的なきつさも強く感じました。

アップダウンを含めた平地でしっかり出せていたパワーが、そのまま富士ヒルでは全く使い物になりませんでした。

この現実を、試走でかなり強く突きつけられました。

原因候補は2つ

なぜここまで走れなかったのか。

考えられる原因は、大きく2つありました。

ひとつは登坂適応力の低さ、もうひとつは高地順応の弱さです。

富士ヒルは、純粋なヒルクライムです。
しかも、標高が上がっていくコースです。

そのため、単純にFTPが高い、SSTができる、テンポ走ができる、というだけでは足りない可能性があります。

登りでパワーを出せるのか。
そして、そのパワーを維持できるのか。
標高が上がっても、出力を落とさずに走れるのか。

このヒルクライムならではの特徴が、平地の練習だけでは十分に見えていなかったのだと思います。

ただ、高地順応については、すぐに検証しにくい問題です。
富士ヒルのような標高環境へ行かなければ、実際にどれくらい影響が出るのかは分かりません。

一方で、登坂適応力は確認できます。

実際の登りで走ってみて、パワーが出るのか。
心拍はどうなるのか。
同じ強度を平地と同じように維持できるのか。

まずは、自分で確認できる登坂適応力から確認してみることにしました。

富士ヒル試走後、数年ぶりの鹿野山へ

鹿野山での1回目の登坂練習。ロードバイクと牧場前の風景です。

向かったのは鹿野山です。

過去にはあれだけ走っていた鹿野山ですが、ここ最近はかなりご無沙汰でした。

鹿野山ヒルクライムとして最も最近走ったのは、2024年11月の福岡口。
湊の上りは2024年2月、宝竜寺に至っては2021年5月が前回の記録でした。

もちろん、昨年も富士ヒルの試走には行きました。

しかし、富士ヒル対策として必要な「まとまった登り」を継続的に走っていたわけではありません。
つまり、実質的にはヒルクライムの練習をほとんどしていなかったということになります。

昨年の富士ヒルで特に苦戦した理由も、このあたりにあったのかもしれません。

まず走ったのは、実に2年3か月ぶりの湊ルートです。

ここでは、10分ちょっとの登りで過去最高レベルのパワーが出ました。

つまり、短時間の強度はしっかり出ています。
エンジンそのものが極端に弱いわけではないと思います。

もし、このままSST領域でも普通にパワーが出るのであれば、登坂力の低さが原因ではない可能性も出てきます。

しかし、順調だったのはここまででした。

次に走った宝竜寺の登りでは、結果は明らかでした。

宝竜寺は15分前後の登りですが、勾配の感覚としては富士ヒルに近いイメージがあります。

ここで明らかだったのは、パワーに対して心拍が高いことです。

また平地のSSTであれば、多少心拍が上がっても、その後に少し落ち着かせることができます。
しかし宝竜寺では、後半に行くにつれて心拍がまったく落とせないような感覚がありました。

もちろん、主観的なきつさ、いわゆるRPEも平地のSSTより高く感じました。

この結果から浮き彫りになったのは、登坂力の低さです。

一般的には、登りのほうがパワーを出しやすく、平地のほうがパワーを出しにくいという人も多いと聞きます。

しかし、私の場合は逆でした。

平地では出せるはずのパワーが、登りでは思ったように出ません。
同じように踏んでいるつもりでも、どこか感覚が違います。

特にSST領域では、パワーに対して心拍が高く出やすいです。

同じパワーを出すために、平地よりも余計に体を使っているのかもしれませんし、上りの特有のポジションの違いもあるのかもしれません。また他にも原因があると思いますが、結果的に心拍が高くなり、長く維持するのが難しくなる。

これこそが、ここ2年間、ほぼヒルクライム練習をしてこなかった、今の自分の登坂力の低さなのだと思いました。

ただし、登坂力が低いことと、パワーそのものが低いことは同じではないのかもしれません。

というのも短時間パワーはしっかり出せています。
問題は、その力を登りのSST領域や、富士ヒルのような長時間の登りで安定して使えていないことです。

短時間なら出る。
しかし、登りで長く維持するとなると効率が悪い。

ここに、富士ヒルで打ちのめされた大きな原因があるのではないかと考えています。

であれば、やることはひとつです。

登坂適応力を上げるしかありません。
登りに慣れれば、平地で作ったパワーを登りでも使えるようになるかもしれません。
繰り返し登りを走ることで、登坂適応力がどこまで上がるのか。
今は、それを試すしかありません。

2回目の鹿野山 ヒルクライム練習

霧に包まれた鹿野山山頂バス停付近。2回目の登坂練習で登坂適応を確認した場面です。

そして、2回目の鹿野山ヒルクライム練習に行きました。

ここで前回と同じように、パワーに対して心拍が高く出るのであれば、はっきり言って今回の富士ヒルはかなり厳しい結果になります。

つまり、登坂練習を入れても反応がほとんど変わらないのであれば、登坂適応を短期間で上げるのは、私にとっては難しいということです。
そしてそれは、今年の富士ヒルで良い結果を望むのがかなり厳しくなる、ある意味では残酷なテストでもありました。

しかし、2回目は明らかに反応が違いました。

まず、全力TTとして走った湊ルートでは、前回よりも明らかにRPEが下がっていました。

前回は、もう息も絶え絶えで、今出ている平均パワーを絶対に下げないように、限界近くで登っているような感覚でした。
しかし2回目は、主観的に明らかな余裕がありました。

わずかではありますが、前回よりもパワーは高く、それでいて主観的なきつさは低く感じました。

もちろん、気温や風など、まったく同じ条件ではありません。
それでも、わずかながら希望の光が見えてきた気がしました。

そしてTTを終えたあと、次はSSTインターバルです。

SSTを始めてみると、こちらも前回よりパワーが出やすい感覚がありました。

もちろんSST強度なので、決して楽ではありません。
それでも、前回のように「残りの本数が思いやられる」という感じではなく、主観的な強度は確実に低く感じました。

そして肝心の数値です。

心拍数はほぼ変わらないにもかかわらず、前回より10W以上高いパワーを出せるようになっていました。

これはかなり重要だと思っています。

心肺能力やFTPそのものが、数回の登坂練習で急に大きく伸びたとは考えにくいです。

つまり、能力そのものが急に伸びたというより、平地で作ってきた力を、登りで使えるようになってきた可能性があります。

パワーがなかったわけではありません。
持っているパワーを、登りで使う技術や体の使い方が足りていなかった。

ポジティブにそう考えたほうが、今回の変化にはしっくりきます。

私の場合は、平地でのパワーの出し方と、登りでのパワーの出し方が、少し違うのかもしれないと感じました。

そして、この差による影響が、特に登りが長い富士ヒルでは積み重なり、大きく出るのだと思います。

平地では強くなっていた。
でも、登りで強くなっていたわけではなかった。

この事実を、鹿野山でかなりはっきり感じました。

ただし、2回目で改善が見えたことは大きな収穫です。

少なくとも、登坂適応はまったく上がらないものではなさそうです。
平地で作ってきたパワーを、登りで使える形に変換できる可能性はあります。

だからこそ、次の試走までにやるべきことははっきりしました。

もう数回、しっかりと登りでSSTインターバルを行う。
そして、登りでパワーを出す感覚を体に覚えさせる。

富士ヒルまでに残された時間は多くありません。
それでも、今やるべきことはかなり明確になってきました。

次の試走が本当の確認

今は、あと数回、登坂練習を入れる予定です。

目的は、登坂への順応性を上げることです。

・平地で作ったパワーを、登りで使えるようにする。
・登りでSSTを維持し、心拍が過剰に上がらないようにする。
・富士ヒルのように、長く続く登りへ適応する。

もちろん、あと数回の練習でどこまで変わるのかは分かりません。

それでも、できる限りのことはしておきたいと思っています。

登坂への適応がある程度上がってきた状態で、もう一度富士ヒルを試走します。

そこでタイムやパワーが改善すれば、原因の大きな部分は登坂適応不足だった可能性が高いと思います。

もちろん、それだけで全てが説明できるとは言い切れません。
ただ、登坂練習によって明確に走りが変わるなら、少なくとも大きな原因のひとつは登坂適応だったと考えられます。

逆に、登坂適応が上がっているはずの状態でも、次回の富士ヒル試走でパワーが出なかった場合。

そのときは、もうひとつの原因がかなり濃くなります。

高地順応の低さです。

富士ヒルは標高が上がります。
空気が薄くなります。
人によっては、ここで明確にパフォーマンスが落ちる可能性があります。

もちろん、ペース配分や補給、ウォーミングアップなどで対策できる部分はあります。
ただし、高地への順応能力に先天的・後天的な個人差があるのであれば、簡単に解決できる問題ではありません。

登坂適応なら、まだ練習で改善できる可能性があります。
しかし、もしも先天的な高地順応の弱さが大きいのであれば、そこはもう受け入れるしかないのかもしれません。

富士ヒル試走時に見えた富士山。標高が上がる富士ヒルでの高地順応について考える場面です。

もしそうであれば、かなり残酷な結果です。

だから、次の試走は楽しみでもありますが、正直なところ怖さもあります。

登坂練習によって改善しているのか。
それとも、前回と同じようにやはり高地で大きく落ちるのか。

その答えが、次の試走でかなり見えてしまうからです。

まとめ

この記事を書いている時点では、まだ結論は出ていません。

富士ヒル本番まで残り2週間を切っていますが、今は、富士ヒルで打ちのめされた理由を分解し、ひとつずつ確認している途中です。

今回、完全に露呈したのは明らかな登坂力の低さです。

しかし、それだけではなく、高地で出力が落ちやすい体質的な問題もあるのかもしれません。

現時点では、登坂適応不足の影響はかなり大きかったと思っています。
実際に登りの練習をすることで、パワーは少しずつ出るようになってきました。

ただし、それで富士ヒルの結果が改善するかどうかは、まだ分かりません。

次の試走で、かなりはっきりすると思います。

改善すれば、まだ可能性はあります。
改善しなければ、かなり厳しい現実を受け止める必要があります。

ただ、分からないまま運任せで本番へ行くよりは良いと思っています。

富士ヒル試走で弱い理由をできるだけ分析し、今できることを最後までやる。

今年の富士ヒルは、その現実を突きつけられるところから始まりました。