富士ヒルが終わりました。
山が苦手な私としては、毎年富士ヒル前は少し憂鬱になります。しかし、それでも富士ヒルが終わると、結果にかかわらずまた走りたいと思ってしまいます。
多くの参加者が同じコースを走り、ときには協力し合いながらゴールを目指す。そういうところも、富士ヒルが多くの人を惹きつける理由なのかもしれません。
そして富士ヒルが終わってみれば、目標を達成できた人もいると思います。逆に思うような結果が出なかった人もいると思います。
富士ヒルは、良くも悪くも結果がはっきり出るイベントです。タイムも出ますし、ブロンズ、シルバー、ゴールドといった分かりやすい基準もあります。
だからこそ、終わった直後はどうしても結果だけを見てしまいやすいです。
目標に届いたのか。届かなかったのか。去年より速かったのか。それとも、思っていたよりも走れなかったのか。
もちろん、結果を見ることは大切です。レースやイベントに向けて準備して、目標がある以上、結果を振り返ることは必要です。
しかし、結果だけを見て終わらせてしまうのは、少しもったいないと思います。
というのも富士ヒルに向けて積み上げてきた練習は、当日のタイムひとつで消えるものではありません。
その練習は、確実に身体の中に残っています。
富士ヒル対策練習の効果
富士ヒルに向けた練習は、選抜クラスや上位を狙うようなレベルになってくると、かなり専門的な内容になると思います。
ただ、多くの一般参加者にとっては、富士ヒル対策の中心はかなり良いベース構築になっているはずです。
長い時間を走る。一定のパワーを維持する。テンポ走やSSTを行う。Z2で持久力を作る。登りで淡々と踏み続ける。補給をしながら走る。疲れてきても大きく崩れないように走る。
こういった練習は、富士ヒルだけのためのものではありません。
ロードバイクで速く走るための、かなり大切な土台になります。
富士ヒルに向けてしっかり練習してきた人ほど、知らず知らずのうちに有酸素の土台は大きくなっているはずです。もちろん、練習の仕方を大きく間違えていなければ、という前提はあります。
毎回出し切るだけの練習だったり、疲労を抜かずにひたすら高強度を重ねるだけだったりすれば、うまく積み上がらないこともあります。
しかし、Z2、テンポ、SST、長めの登坂練習などを継続してきたのであれば、それは間違いなく今後の走力につながる土台になります。
富士ヒルの結果が良かったかどうかとは別に、そこまで積み上げてきた練習そのものには間違いなく価値があります。
結果は一日で決まりますが、練習で作った土台は一日で消えるものではないからです。
まずは回復
富士ヒルが終わった直後は、すぐに次の練習を考えたくなる人もいると思います。
結果が良かった人は、勢いそのままにもっと走りたくなるかもしれません。逆に、結果が悔しかった人は、すぐに練習を再開して取り返したくなるかもしれません。
ただ、まずはしっかり回復させたほうが良いと思います。
富士ヒルは、身体だけではなく、精神的にもかなり大きなイベントです。数か月間そこへ向けて準備してきた人であれば、終わったあとに一気に疲れが出ても不思議ではありません。
脚の疲労だけではなく、睡眠、内臓、集中力、気持ちの張り。そういったものも含めて、一度緩める期間は必要だと思います。
一般的には、7〜10日くらいは楽に乗っても良いと思います。
完全に休んでも良いですし、気持ちよく流す程度でも良いと思います。しばらく行けていなかったコースをのんびり走るのも良いですし、パワーを見すぎず、ロードバイクを楽しむ期間にしても良いと思います。
富士ヒルが終わった直後に、焦ってまた高強度を入れる必要はありません。
せっかく作った土台を活かすためにも、まずは疲労を抜くことが大切です。
回復後に刺激を
しっかり回復できたら、次におすすめしたいのは短時間の刺激です。
富士ヒルに向けた練習では、長めのSSTやテンポ走、Z2、登坂持続走が中心になりやすいと思います。
これは富士ヒル対策としてはとても大切です。
ただ、その一方で、短時間の高強度やインターバルはあまり入れていなかった人も多いのではないでしょうか。
たとえば30秒、1分、2分の短時間高強度。あるいは、VO2max付近の短い刺激や、少しレース的な変化走です。
こういった練習は、富士ヒル直前期にはあまり多く入れにくいと思います。疲労も残りやすいですし、富士ヒル本番で必要な持続走とは少し方向性も違います。
しかし、富士ヒルが終わった今であれば話は変わります。
富士ヒルに向けて作ってきた大きな有酸素の土台に、短時間の刺激を入れることで、次の成長につながる可能性があります。
タイミングが良い
富士ヒルに向けて頑張ってきた人ほど、土台は大きくなっているはずです。
長時間走れるようになった。一定ペースで踏めるようになった。SSTに耐えられるようになった。登りで垂れにくくなった。補給やペース配分も少し分かってきた。
これらは、すぐに消えるものではありません。
富士ヒルに向けた練習では、Z2、テンポ走、SST、長めの登坂持続走などが中心になりやすいです。これらは派手な練習ではありませんが、有酸素能力や持続力の土台を作るうえでは、とても重要な練習です。
その土台が大きくなった状態で、しっかり回復を挟み、その後に短時間高強度の刺激を入れる。
これは、次の成長につなげるうえでかなり理にかなった流れだと思います。
さらに、季節的にも今は良いタイミングです。
本格的な夏に入ると、暑さの影響で高強度の練習はかなりやりづらくなります。心拍は上がりやすくなりますし、脱水や熱疲労の影響も出やすくなります。
だからこそ、気温が上がりきる前に、短時間の刺激を入れておく。
富士ヒルで作った土台が残っていて、なおかつ本格的な暑さに入る前。この時期は、次の成長につなげるにはかなり良いタイミングだと思います。
もちろん、短時間インターバルを入れればすぐにFTPが上がる、という単純な話ではありません。FTPはVO2maxだけで決まるものではなく、持久力、乳酸処理能力、疲労耐性、回復状態など、さまざまな要素が関係します。
それでも、富士ヒルに向けて有酸素の土台を作ってきた今は、新しい刺激を入れることで、FTP向上のきっかけになる可能性があります。
FTPだけが速さのすべてではありませんが、日常的にレースへ出ていない人にとっては、分かりやすい成長の指標にもなります。
富士ヒルが終わりせっかく土台が大きくなっている今だからこそ、その土台に今まで少なかった刺激を入れてあげる。そうすることで、次の成長につながる可能性があるということです。
だからこそ、富士ヒルが終わった今は、ただ休んで終わりにするには少しもったいない時期だと思います。
短く、鋭い刺激で伸ばす
富士ヒル後におすすめしたいのは、いきなり長い高強度を何本も行うことではありません。
まずは短く、鋭い刺激からで良いと思います。
30秒の高強度を数本。1分走を数本。2分程度のやや長めの刺激。もしくは短めのVO2maxインターバル。
こういった練習は、富士ヒル前にあまり使っていなかった能力へ刺激を入れやすいです。
富士ヒル対策で作った持続力に、短時間の出力や反応を加えていくようなイメージです。
ただし、いきなり全力でやりすぎる必要はありません。
富士ヒル後は、思っている以上に疲労が残っていることがあります。気持ちは元気でも、身体の奥に疲れが残っていることもあります。
ですので、最初からたくさん行う必要はありません。
まずは、走行中に30秒ほどしっかり上げる刺激を2〜3回入れるくらいでも良いと思います。慣れてきたら、1分前後のやや長めの刺激にしてみても良いです。
VO2max系のインターバルも、いきなり本格的に何本も行うのではなく、最初は少なめで十分です。
大切なのは、富士ヒルで作った土台に、今まであまり入れていなかった種類の刺激を少しずつ加えていくことです。
富士ヒル前に作った土台を、富士ヒル後に違う方向へ少し広げていく。そういうイメージで行うと良いと思います。
富士ヒルの結果だけではない
富士ヒルは大きな目標になりやすいイベントです。
だからこそ、終わると気持ちが切れてしまうこともあります。
結果が良かった人は、大変な練習から一度離れてしまうかもしれません。逆に結果が悔しかった人は、無理して同じ練習を続けたり、落ち込んでしまったりするかもしれません。
しかしどちらにせよ、富士ヒルに向けて積み上げた練習は無駄にはなりません。
富士ヒル当日に思ったような結果が出なかったとしても、それまでの練習が意味のないものになるわけではありません。むしろ、今こそ次につなげるタイミングだと思います。
富士ヒルに向けて作った土台を、富士ヒルで終わらせてしまうのはもったいないです。
しっかり回復させる。少し気持ちを緩める。そのうえで、今まで少なかった刺激を入れてみる。そうすることで、富士ヒル後の今だからこそ得られる成長があるかもしれません。
ロードバイクで結果を出すために、特別な魔法のような方法はないと思います。
結局は、日々少しずつ積み上げて、少しずつ成長していくしかありません。富士ヒルに向けて頑張った練習は、その積み上げの大きな一部です。
結果が良かった人も、悔しかった人も、そこで終わりにするのはもったいないです。
今こそ、せっかく作った土台を次の成長につなげる時期だと思います。

